緑茶を飲む習慣は、仏教と深い関わりがあったという。
「昔は韓国でも緑茶を飲んでいましたけど、14世紀末に始まった李朝時代に儒教が国教化され、だんだん飲まれなくなったんです。その代わり果実や穀物、野草、花など身近にある季節の恵みを工夫して、お茶として飲むようになりました。それが韓国伝統茶です」
と李映林さん。たとえば果実をはちみつや砂糖に漬けこんだもの、草木の葉や花を乾燥させたもの、木の根や実などをコトコト煮出したもの、いわゆるスープのようなものまでも、韓国ではお茶として飲まれてきたのだ。
「韓国料理の基本は薬食同源。食事を通じて心身を整えるという考え方です。韓国伝統茶も同じ考え方で、その日の自分の体調や気分に合わせてお茶を飲みます。だから、冷えを意識したら生姜茶、食べすぎたときは消化を促進する五味子茶など、いろんなものをお茶にして飲むわけなんです」
娘のコウ静子さんも、1日数種類のお茶を飲んで体調を整えるそう。
「私は忙しいときでも、自分のためにおいしいお茶をいれて飲みます。何よりもおいしいお茶をいれる心のゆとりを持つことが、大切だと思うんです」
台所をあずかる女性は家族の健康を守る要。自分のために飲む一杯のお茶には、家族を見守る深い意味がある。
韓国伝統茶のさらなる魅力は、内側から美しくなれること。では、ぽっこりお腹解消にはどんなお茶を選べばいいのだろう? 「寒い季節におすすめなのは、生姜茶。体を芯から温めて血行をよくし、代謝をアップさせ、体脂肪の燃焼を促すのでダイエット向きです」 と話すコウ静子さん。日本でもダイエット飲料として最近、人気が出てきた黒豆茶も注目だとか。 「黒皮の色素のアントシアニンには抗酸化作用があって、血液をサラサラにして体脂肪をつきにくくする働きがあります。煮豆と違って、作るのにあまり時間がかからないのもいいですね」
自然の成分を引き出して穏やかに効くのが韓国伝統茶。味わいも最高だ。