金治有彦さんに訊く、一生歩ける股関節と膝
撮影・中島慶子 スタイリング・白男川清美 ヘア&メイク・遠藤芹菜 モデル・くらさわかずえ 文・野沢愛也子
もしも股関節が動かなくなったら……
最近足が上がらなくて何もない道でもよくつまずくことはないだろうか。歩いたり走ったり泳いだり、生活の動きの軸にあるのが股関節。
「けん玉を想像してみてください。股関節もボールと皿の骨が組み合わさっていて、動きに合わせて前後左右に動いたり、回りながら上半身と下半身をつないでいるのです」
そう話すのは股関節を専門とする医師の金治有彦さん。
「体に200ほどある関節の中で一番大きい股関節は、立ったり歩くだけではなく座位を保持することにも関与しています。股関節が悪くなれば、歩行はおろか、長時間座ることや寝返り、料理や運転……、日常で当たり前にできている動きができなくなるでしょう。股関節の痛みの原因は筋力低下がほとんどなので周辺の筋肉を元気な状態にしておくのも大事ですよ」
歩行中に加わる負担は体重の3〜4倍以上!?
人間の頭の重さは約4〜6kg。それを支えるだけでも大変なのに、歩いたり運動したり、日常の動きだけでも体にかなりの負担がかかっているのだ。
「歩行中、股関節には自分の体重の3〜4倍もの負荷が加わります。さらに、ジャンプするとなれば体重の約12倍もの負荷がかかるのです。股関節はそれだけの負荷を支えている部位。股関節が原因で、体にほかの不調が出てくることも非常に多いんですよ」
例えば右の股関節が痛むと、左の股間節でそれをカバーしようと動く。そうすると腰や膝にその分の負荷がかかって痛めてしまうという。
「腰や膝を痛めて運動しなくなると、体はむくみやすくなります。その結果、血液循環が滞って疲れやすくなったり、寝つきが悪くなったり、睡眠が浅くなるなど負の連鎖が続いてしまうのです」
食事や運動、日常の意識が、歩ける未来に
「股関節が弱くなってしまう大きな原因は筋力低下や運動不足。いつまでも健康的でいたいなら、まずは運動と健康的な食事を意識することが何より大切です。適度な運動で体重管理を徹底すると、単純に股関節への負荷も小さくできるのです」と金治さん。
骨密度の最大値を“ピークボーンマス”と言うが、これは20〜30代がピークなのだそう。生活習慣を見直してこの位置をできるだけ高く、あるいは30代以降の下がり幅をできるだけ小さくすることで、骨粗鬆症や股関節疾患のリスクを防ぐことができる。
「日常的に歩いていると呼吸器やホルモンにもいい影響があるという研究結果も出ています。歩けなくなってしまうほとんどの人は足腰の痛みが原因です。股関節、そして膝をしっかり鍛えて、健康的な未来を今から目指しましょう」
『クロワッサン』1135号より
広告