賢く摂れば、心強い味方に——良質な油と脂の選び方
撮影・青木和義 文・野尻和代 構成・中條裕子
人間の体に必要な栄養素、脂質の働きとは?
脂質=ハイカロリーというイメージから敬遠されがちかもしれないが、たんぱく質や炭水化物(糖質)と並ぶ三大栄養素の一つであり、体を動かすために不可欠なもの。しかも糖質やたんぱく質に比べ、少量で効率よくエネルギーになるメリットも。
「脂質は、大きく分けて2種類の脂肪酸で構成されています。動物性の脂に多く、コレステロールの合成や吸収を高める飽和脂肪酸と、植物や魚の油に多く、コレステロールの合成を抑制する不飽和脂肪酸。というと、動物性は不要なのでは?と思いがちですが、コレステロールは細胞膜を作ったり、脳細胞の材料になる大切な役割があるんです」と、牧野直子さん。
しかし、特に飽和脂肪酸は摂りすぎると中性脂肪を増やすので、注意が必要だという。では、脂質の適量はどれくらいなのだろうか?
「一日の脂質摂取量の目安は50〜60g。肉や魚など動物性1に対し、植物性が2の割合で、バランスよく摂ることが大切です」
肉や魚に含まれる脂質を上手に食事に取り入れる
きちんと計量できる植物油と違い、肉や魚などの食材や加工食品の脂質は、目で見て含まれている量がわかりにくいもの。
「目に目えない脂質は多くの食品に含まれています。肉や魚は手のひらサイズ(総量80〜100g)で、たとえば牛サーロイン26.7g、牛モモ12.6g、ブリ13.1gです。肉は部位により脂の量が違うので、できるだけ少ない部位を選ぶといいでしょう」
また、肉は調理法で脂を減らすことができるので、それを取り入れるのも手。
「ちょっと脂が気になる豚バラ肉はしゃぶしゃぶにすると、脂が落とせます。鶏肉を焼く時は皮面から焼けば、脂が落ち、調理油も控えめにできて一石二鳥です」
青魚も脂が多いが、DHA、EPAといった脂は植物油と同じ不飽和脂肪酸。こちらは意識して摂取したい脂だ。
「青魚はできるだけ生で食べるのが一番ですが、煮魚にすると脂が溶け出した煮汁もそのまま摂れるのでおすすめです」
目に見えにくい脂質を含む食品
肉、魚、卵、乳製品、大豆加工品、パン、油で揚げた麺、ナッツ類、ドレッシング、マヨネーズ、ケーキ、クッキー、チョコレート、スナック菓子、アイスクリームなど
原料も成分も異なる植物油、その働きとは
「植物油は種類によって、体の中での働きが大きく変わります。LDL(悪玉)コレステロールを減らすオメガ9系、免疫の働きを促すオメガ6系、動脈硬化やアレルギーの抑制、脳機能維持などに作用するオメガ3系が植物油の主な成分です」
中でも、オメガ3系の油は体内で生成できず食品から摂取しなくてはならない必須脂肪酸を含んでおり、注目されている。
「オメガ3系のα-リノレン酸は摂取できる食品が限られているので、不足しやすい脂肪酸。同じ働きの脂を持つ青魚が苦手な人は、意識して摂ってほしいですね。オメガ6系も同じく必須脂肪酸ですが、さまざまな食品に含まれているのでほぼ不足することはありません。摂りすぎには注意を」
また、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸も短時間でエネルギーになり、体に溜まりにくいのでダイエットに有効とも。
「ただし、どの植物油も摂りすぎは厳禁です。一日小さじ5(20g)くらいを目安にして、取り入れてみてください」
体に必要な植物油の主成分
オメガ9(オレイン酸)
HDL(善玉)コレステロールを増やして、LDL(悪玉)コレステロールを抑える作用が。中性脂肪の合成を抑制し、血管の健康を保つ。抗酸化作用も。
オリーブオイル、ごま油、米油、なたね油
オメガ6(リノール酸)
必須脂肪酸。血液中のコレステロールや血圧を下げる効果が。白血球を活性化して病原菌などを攻撃する作用があるが、過剰摂取は要注意。
ごま油、米油、なたね油、グレープシードオイル
オメガ3(α-リノレン酸)
必須脂肪酸。抗炎症、抗酸化作用があり、血液をサラサラにする効果も。体内で中性脂肪を減らすEPA、脳機能を向上させるDHAに変化。
アマニ油、えごま油
中鎖脂肪酸
すぐにエネルギーに変わりやすく、体内の脂肪燃焼を促進し、空腹感を抑える働きもあるので太りにくい。脳細胞のエネルギー源にも。
ココナッツオイル、MCTオイル
ブリの照り焼き
青魚の良質な脂を照り焼きで余すところなく。
材料(2人分)
ブリ 2切れ(1切れ80~100g相当)
塩 少々
小麦粉 適量
米油またはなたね油 大さじ1
合わせ調味料[しょうゆ・みりん・酒 各大さじ1(合わせておく)]
大根 150g(すりおろして水気を絞る)
作り方
1. ブリに塩をふって10分ほどおき、水気をふいて小麦粉を薄くまぶす。
2. フライパンに油を中火で熱し、ブリの皮面を下にして入れ、側面の色がほとんど変わったら身を返す。1分ほど焼いたら余分な油をキッチンペーパーでふき、弱火にして調味料を加える。次に中火にし、沸々してきたら汁を煮詰めながら全体に絡める。
3. 器に盛り、大根おろしを添える。
牛赤身肉のステーキ
抗酸化力に優れた油でシンプルに焼き上げる。
材料(2人分)
牛赤身肉 2切れ(1切れ80~100g相当にラップをのせ、麺棒などでたたいて焼き縮みを防ぐ)
塩少々
オリーブ油またはグレープシードオイ ル大さじ1
粗びきこしょう 少々
クレソン 適量
カットレモン 2切れ
作り方
1. 肉の片面に塩をまんべんなくふっておく。フライパンに油を入れて強めの中火で熱し、肉の塩をした面を下にして焼く。上側に塩をふってひっくり返し、両面を焼く。
2. 器に盛り、粗びきこしょうをふり、クレソン、カットレモンを添える。
『クロワッサン』1133号より
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