腰痛の約8割はセルフケアで予防や改善が可能とのことですが、治療が必要となる残り約2割の腰痛の原因は何でしょうか。
「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、腰椎椎間板ヘルニア、骨粗しょう症に伴う圧迫骨折など、骨・椎間板・神経に問題が起きる病気が原因の腰痛と、尿路結石など内臓の病気の症状として現れる腰痛の2種類があります。実は、前者の腰痛も加齢が要因であることがほとんどです」
そのため、腹筋・背筋・大臀筋の筋肉量を維持し、正しい姿勢を保つことで、ある程度の予防や症状の改善は可能とされています。
「もっとも、骨粗しょう症は筋肉量だけでなく、骨量にも注意しなければなりません。骨粗しょう症の患者は80%が女性ですが、それは閉経によって女性ホルモンのエストロゲンの分泌が激減するからです。エストロゲンは骨の新陳代謝のサイクルで、骨からカルシウムが溶け出す『骨吸収』を抑制する働きがあります。そのため、閉経後の女性は丈夫な骨を作ることが難しくなり、骨密度が低下した骨は転倒などちょっとした衝撃で折れやすくなりますが、特に怖いのが、背骨の圧迫骨折です」
圧迫骨折による腰の痛みも大変ですが、圧迫骨折していることに気づかなかったことで適切な治療が受けられず、潰れた状態で骨が固まり背骨が曲がってしまうと、もっと大変です。背骨は上半身を支えているため、必然的に姿勢も悪くなってしまい、腰痛が引き起こされてしまいます。
このような場合、骨自体が変形してしまっているので、筋肉を鍛えても正しい姿勢をとることができず、腰の痛みは改善しません。
「新陳代謝によって骨は生まれ変わりますが、やはり骨粗しょう症は若いうちから骨密度の低下を防ぐ生活習慣を身につけることが大切になってきます。まず注意してほしいのが、丈夫な骨を作るために必要な栄養をこまめに摂取することです」
骨を作るために必要な栄養といえば、まず思い浮かぶのがカルシウムです。ところが、カルシウムを摂取するだけでは骨は丈夫になりません。カルシウムの吸収をよくする働きを持つビタミンDや、骨の形成を促すビタミンKなども一緒に摂取する必要があります。
ただし、ビタミンDを含む食べ物は数が限られているため、毎日の食事で十分な量を摂取するのは難しい……そこで大切になってくるのが日光浴だそうです。
「最近の女性は美容のために紫外線を敬遠していますが、人間の体は日光に当たることで、体内でのビタミンDの生成が促されるようになっています。
さらに、適度な運動によって骨に刺激を与えることで骨の新陳代謝が促されるため、ウォーキングや散歩をするついでに日光浴もしてしまいましょう。ただし、日焼けだけでなく熱中症の心配もありますので、あまり紫外線や気温が強くない午前中や夕方の時間帯がおすすめです。
ちなみに、極端に日照時間の少ない北欧ではありませんので、全身に日光を浴びる必要はありません。顔やデコルテ部分を防御する一方で、手や足など多少日焼けしても大丈夫な部位に日光を当てる部分浴で十分です」