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極上酢が持つ旨味を生かす。毎日が減塩、飯尾醸造一家の食卓。

お酢を上手に使えば、塩分カットはうまくいく。若狭湾に面した小さな市、京都・宮津。古来の製法を守る「飯尾醸造」を訪ね、そのコツを教えてもらった。
  • 撮影・福森クニヒロ

すべての工程を自家で行う、 日本でも希少な酢の生産家。

醸造用タンクがずらりと並ぶ。一度仕込んだらそのまま置く「静置発酵」。むしろで保温。

天橋立で有名な宮津だが、もう一つ有名なものがある。それが、明治26年から酢造りを始めて130年近くになる「飯尾醸造」だ。米作りから手がけ、生産まで2年近くをかけるという豊潤な風味の酢には、多くの愛用者がいる。

「こだわっているのは、無農薬の新米を使うということ。60年前に祖父が始めました。自分たちの棚田で、毎年、田植えと収穫をします」(飯尾彰浩さん)

昔の製法を忠実に守っているという。

「4月に植えた苗を10月に収穫、精米をして1月から酒の仕込み。できた酒に種酢を仕込み、発酵を始めるのが4月。そこから約240日かけます」

1リットルの酢を作るのに、一般的なメーカーで使う米は40g、飯尾醸造の「富士酢」は200g、「富士酢プレミアム」は320gの米を使う。

タンクに寝かせ、ただひたすら発酵を待つ。多くの酢メーカーでは、機械で混ぜ2日ほどで造ってしまうという。

「この味を守りつつ、もっとおいしい酢を造る必要も。今も様々な商品を開発していますが、自信作は、『富士酢プレミアム』。つんとくる酸っぱさではなく、旨味が前面に出ています」

こういう酢だからこそ、毎日でも食べられる。その食卓を見せてもらった。

飯尾醸造●いいおじょうぞう
京都府宮津市小田宿野37
TEL.0772・25・0015
www.iio-jozo.co.jp
平日、土曜は蔵見学もできる。「富士酢」の名前と意匠は、「日本一の酢を造る」と、初代がつけた。

蔵にはショップがあり、すべての商品がラインナップ、1割引で買える。醤油、粉山椒など地元の逸品や、米袋で作ったトートバッグなども。

左から、紅芋酢(500ml 2,592円)、富士酢プレミアム(900ml 2,376円)、玄米黒酢(500ml 1,728円)。

米だけでなく、紅芋からも同じ製法で時間をかけて造っている。玄米から造る黒酢も、水や炭酸で割ってそのまま飲むとおいしい。

塩なし砂糖なし、薄口醤油と酢だけの特製酢飯。

毎日の食卓に、お酢をたくさん取り入れている飯尾家だが、一番の自慢はこちらの手巻き寿司。来客にも好評だ。

「普通のすし酢は、酢と砂糖と塩で作りますが、我が家は、酢と薄口醤油だけ。これだと醤油をつけずに食べられます。醤油をつけると海苔が湿ってしまうし、喉も渇きます」と飯尾綾子さん。

海苔と酢飯だけでも充分いける。具は、おばんざいというのもユニーク。

「うちでは“グナッシー”と呼んでいます。この酢飯は温かいほうがおいしい。だから飯台で切った後は、保温ジャーに戻し、小出しに食卓に出します」

酢飯を作るのは、彰浩さんの仕事。すし酢はしゃもじで受けてから、まんべんなく回しかける。

【材料(2~3人分)】 
米 2合
富士酢プレミアム 60ml
薄口醤油 20ml

【作り方】
1.酢飯用に米2合を炊く。混ぜ合わせるすし酢の分(米1合につき40㎖)だけ水を減らす。
2.酢と薄口醤油を合わせ、すし酢を作る。
3.飯台に山型になるようにしてご飯を取り、すし酢をまんべんなく回しかけて1分おく。
4.しゃもじで切るように混ぜ合わせ、ツヤよく仕上げる。

*具は刺身に限らず、おばんざいなどなんでも。今回は、仕上げに酢を使った金平ごぼう、油で炒めてくたくたになるまで煮た万願寺唐辛子、茹でたイカの梅和え。

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