野菜の栄養を損なわない調理方法は?素朴な疑問にお答えします。
野菜指導/名取貴光 料理・栄養指導/岩﨑啓子 撮影/黒川ひとみ 文/韮澤恵理
Technique(野菜の豆知識)
●皮やクズ野菜は冷凍貯蓄して余さず全部食べる!
野菜は皮や色の濃い部分に栄養がたっぷり。でも、無理に皮や硬い葉を食べる必要はありません。調理に使わない部分は冷凍保存袋にポンポンためておきましょう。
ねぎの青い部分や生姜の皮などは、肉の下ゆでや魚の臭み取りに重宝。根菜の皮や青菜の残りは野菜だしとして活用するのもいい。
【保存袋にドンドン貯蓄】
1回に出る野菜くずは少量でも、冷凍保存袋にポイポイとためていくといい。肉をゆでたり、ヘルシースープを作るときに、あると便利なストックに。
Q.野菜はさらすと栄養が減るの?
野菜の健康成分は水に溶けやすいもの、溶けにくいもの、揮発しやすいものなどさまざま。基本は水にさらすと栄養成分は減ります。
さらすべきだと思い込んでいるたまねぎやごぼうも、実はさらさなくてもおいしく食べられます。たまねぎは切ってしばらくおくと刺激成分がとび、ごぼうのアクはうま味でもあるのです。
【さらさないほうがいい】
たまねぎやねぎ類はさらさないのがお約束。辛味が気になるなら切ってしばらく空気にさらして。
【さらすときは手早く!】
さらしたいときには、ごく短時間、さっと水にくぐらせる程度に。
Q.皮に栄養が多いって本当?
外敵から体を守るために作られるポリフェノールなどは、外からの刺激が多い皮や皮のすぐ下にたくさん存在します。できるだけ皮ごと、または薄く皮をむくのがポイントです。
でも、無理に硬い皮まで使って料理がおいしくなくなるのはNG。ケースバイケースで加減して。
【厚めに皮をむく】
大根やかぶなどはすりおろすなら皮ごと。煮る場合は皮の繊維質が味わいを落とすので厚くむき、皮は別途活用。
【こそげる】
ごぼうなら包丁の背でこそげたり、生姜は丸めたアルミホイルでこすってむくと損失が少ない。
Q.ゆでると栄養は流れ出す?
おなじみのゆで野菜は、最も栄養を損なう下ごしらえ方法です。湯に水溶性の栄養成分が溶け出してしまい、加熱時間も長めになりがちなのがその理由です。
湯への流出がない蒸し調理がおすすめですが、ゆでるならごく短時間湯に通し、すぐ冷水に取るか、ざるに上げて冷まします。
【ゆでる】
しゃぶしゃぶ程度に湯に通して冷水へ。色味が気にならない野菜はざるで冷ます。
【蒸す】
蒸し野菜は水溶性の栄養素の損失が少ない。蒸し器やせいろを活用し、高温で一気に加熱するといい。
Q.電子レンジのほうが栄養は残りやすい?
野菜の下ごしらえでは、電子レンジがおすすめ。食材内部の水分を揺らすことで発熱し、加熱する調理なので、水分の多い野菜に向いた調理法なのです。ゆで湯への栄養成分の流出を防ぎ、加熱時間が短いため、ビタミンなども壊れにくいのが魅力です。
デメリットは乾燥と加熱のし過ぎ。事前に野菜を水にくぐらせ適度な水分を保持します。加熱時間は重量に比例。量が半分なら加熱時間も半分。様子を見ながら調整しましょう。
【ゆるやかラップ】
電子レンジで加熱すると、ラップが密着して食材が潰れることも。ゆるっと余裕をもたせてラップをかけて。
【水気を残して硬めにチン!】
急速な加熱で水分がとぶので、洗った野菜は水気を残して短めに加熱すると余熱でほどよい柔らかさに。
Q.野菜を入れるのは煮立てた後? それとも前?
野菜の調理では、根菜類やいもは冷たい煮汁から、葉野菜や実野菜は煮立てた汁へというのが基本。
煮物の場合、加熱による栄養成分の損失と、煮汁への成分の溶け出しがポイントですが、根菜やいも類などは、でんぷんによってビタミン類が守られることが多いので、硬くならないように冷たい汁から煮るといい。
青菜や実野菜などは熱い煮汁に入れて成分の損失を最小限にしたい。
【冷たい汁から煮る場合】
根菜などは冷たい煮汁に入れて一緒に野菜に熱を入れると味がしみ込み、おいしく仕上がる。
【煮立てた汁に入れる場合】
青菜の煮浸しなどは、温めた煮汁に野菜を入れてさっと煮ると、ビタミンやおいしさを損なわない。
Q.調味料は最初がいいの? 最後がいいの?
調味料はどのタイミングで入れるといいのかは迷うところです。
ある程度味がしみ込んでいないとおいしく感じられない野菜の煮物などは調味した煮汁で煮るのがおすすめ。表面にからんでいればおいしい料理なら、味付けは最後のほうが塩分を控えられます。
炒め物やサラダは後から味付けするのがベスト。最初から塩分を加えると野菜の水分が抜けてシャキシャキ感が失われ、塩分量だけが増えてしまいます。
【最初に味付けする場合】
根菜は最初から煮汁で煮ることでうま味がしみて、煮物などがおいしく仕上がる。
【最後に味付けする場合】
葉物は表面への味つけが効果的。野菜炒めは最後に味付けすると食感も残る。
『Dr.クロワッサン 体に効かせる野菜の食べ方』(2020年9月28日発行)より。
広告