介護は筋力や体力がないとできないと思うでしょうか。しかし、「合理的に身体を使えば特別な筋力も体力も必要ない」と岡田慎一郎さん。特定の筋肉に頼らず、全身を連動することで負荷を分散し、動作をラクに行う身体の使い方を提案しています。
「たとえば、介護や暮らしのなかでよく“中腰の姿勢”になりますが、ほとんどの人はひざを曲げて腰を下ろそうとします。するとひざと太ももの前側の筋肉に負荷がかかり、痛める原因になります」
椅子中心の生活様式への変化は、私たちの身体の動きを、ひざの曲げ伸ばしといった一部の筋力に頼るものに変えました。
「一方、昔の生活では和式トイレや農作業などで自然と股関節が使われて、鍛えられていました。“中腰の姿勢”も、つま先とひざを開いて股関節から腰を落とすといった具合に、股関節を使います。すると、太ももの前側、内側、裏側と足腰全体の筋肉を使うので、負荷をうまく分散できます。身体を痛めずにラクに “中腰の姿勢”がとれるのです」
介護のためにトレーニングが必要だと思う人もいるかもしれませんが、筋トレは合理的な身体運用とは逆の発想だと岡田さん。
「負担を1箇所に集中することで筋繊維を壊し、適切な休養と栄養補給で筋肉をより強くするのが、筋トレの理論です。私が考える合理的な身体の動きは筋トレと逆の発想で、チームプレイのように全身を連動させて使います。今ある身体を上手に活用して自分の可能性を引き出すやり方です」