免疫力はつけられる?免疫力が上がる食べ方とは? 医師に聞きました。
イラストレーション・松元まり子
「毎日、何をどう食べるかによって、病気のリスクに差がつきます。」(伊藤明子さん 赤坂ファミリークリニック院長)
「多くの人は、子ども時代に予防接種をしたことがあると思います。肺炎球菌、水ぼうそう、おたふく風邪など。目的は、ワクチンを体内に入れることで、病原体が入ってきた時に戦える体を作るためです。これがまさしく免疫の仕組みなんですね」と、小児科医で公衆衛生専門医でもある伊藤明子さん。
2020年春、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るいました。その際「免疫獲得が重要」「ワクチン開発を急げ」と盛んに言われたのは、このウイルスが新しいウイルスであり、私たち人間が新型コロナへの免疫がないからです。
今まさに注目を浴びる「免疫力」とは、病原体や病気の元と戦う防御システムのことです。
免疫の主な働きは次の2つ。
⃝ 病原体の体内での増殖を防ぐ。
⃝ 病原体やがん細胞を撃退し、体を感染症や病気から守る。
では「免疫がつく・できる」とは、どういう状態なのでしょう。
「免疫には、大きく分けて自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は生まれながらに持っている免疫反応です。白血球の一種である好中球やマクロファージといった免疫細胞が活躍し、免疫の最前線で異物、病原体を攻撃します」
一方、生後に獲得されるのが獲得免疫です。
「リンパ球の一種であるB細胞は抗体を作ります。病原体が体内に入ってきたときに病原体をキラーT細胞が認識して、感染した細胞ごと破壊します。T細胞は病原体についての〝記憶〟をもつので、2度目以降の敵の侵入に素早く反応します。これが〝免疫ができた〟状態です。予防接種のワクチンは、獲得免疫の働きを利用したものです」
ちなみに抵抗力とは、もう少し広い意味になり、肌のバリア機能や環境の変化に耐える力なども含むそう。
材料をしっかり補って免疫細胞を元気に
風邪を何度もひいたり、不調が続いたりすると、「免疫が落ちたのかしら」と気になるもの。免疫を強くするためにできることは?
「まず、きちんと食事をとること。食べることは体を作ることであり、何をおいても大事です。何をどう食べるかで、感染症や病気へのかかりやすさ、かかりにくさが変わってきます」
伊藤さんの診療では、栄養・食事指導も取り入れていますが、女性の多くが、自分ではヘルシーな食事をしているつもりでいても、実はかなり栄養が不足していて、その状態では免疫力が確実に下がっていると指摘します。
「不調を訴える女性ほぼ全員が、血液検査でたんぱく質が不足していたり、ビタミン、ミネラル欠乏症という結果が出ます。日ごろの食事内容を聞くと、脂肪の多いお肉類を控えていて、サラダやスムージーをよく摂っています。ヘルシーな食生活に思えますが、実は栄養不足で一番危ないのです」
伊藤さんによると、たんぱく質は、筋肉や骨、肌の元であるばかりか、感染症と戦う「抗体」の材料にもなる栄養素であるため、免疫細胞の増強に欠かせません。
そしてもちろん高い免疫力を保つには、多様な栄養素が摂れるように日ごろからバランスのよい食事を心がけることが大前提になります。
「痩せすぎはクイックキラー、太りすぎはスローキラーと言われ、どちらにも健康リスクがあります。目安としては、BMIで20から23でいられるようきちんと食事をとることが大切。年齢を重ねると代謝も落ち、摂り入れた栄養がすべて身になるとは限りません。しっかりと運動も取り入れ、筋力を維持し、代謝をよくしておきましょう」
次に重要なのが、十分な睡眠時間を確保すること。
「睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上寝ている人に比べると、風邪のひきやすさが約3倍という報告があります」
細胞の修復や疲労回復を促す成長ホルモンは、睡眠中に多く分泌されます。
「睡眠不足が続けば、細胞の修復が追いつかず、免疫細胞の力も低下してしまいます。毎日しっかり眠ることを心がけましょう」
そのほか、ストレス調節も免疫機能に影響します。
「過剰なストレスがかかると、自律神経のバランスが乱れ、免疫のバランスも崩れがちになってきます。忙しい毎日の中にも、リラックスする時間を持ちましょう。お酒の飲み過ぎ、タバコも免疫力を低下させるので、禁煙、節酒をお願いします」
免疫力が低下する要因
▢ 栄養不足。
▢ 激しい運動。
▢ 過剰なストレス。
▢ 睡眠不足。
▢ 生活時間が乱れている。
▢ 痩せすぎ(女性でBMI19以下)
▢ 持病(糖尿病、高血圧など)。
▢ 高齢。
▢ 妊娠。