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手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

調味料として大活躍の塩麹と、健康的で自然な味の甘酒が暮らしに定着し、さまざまな製品が出回っています。
麹の力を実感するなら手作りがおすすめ。案外簡単です。
発酵の名門、東京農業大学の専門家に教わりました。

撮影・黒川ひろみ 文・韮澤恵理 イラストレーション・松元まり子

麹菌の力を直接感じる塩麹と甘酒を身近に。

麹ブームを代表するのが塩麹と甘酒です。塩麹は米麹に塩と水を加えて熟成し、麹菌が米を糖化させた調味料。麹が米を分解する際に大量の消化酵素を作るので、食材を漬けると消化がよくなります。

さらに、たんぱく質やでんぷんがアミノ酸や糖に変わるため、うまみが増すのが人気の秘密です。

甘酒は塩麹よりずっと歴史が長く、炊いた米に水と米麹を加えて保温することで米のでんぷんがブドウ糖に変わり、甘くて栄養価の高い飲み物になることから、疲労回復や夏バテ防止に昔から活用されてきました。砂糖が貴重な時代に重要な甘味料でもありました。

市販品は輸送するために菌の活動を止めるのですが、手作りすれば、生きたままの麹菌を活用できるので試してみてください。

一般の米麹は麹菌が繁殖したところで乾燥させたものが主流です。

【米麹の種類と特徴】

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

●粒麹(バラ麹)
米麹は蒸した米を冷まして種麹をつけ、温度管理をした環境で数日間麹菌を繁殖させて作る。途中何度か手で混ぜて、粒をバラバラにしているのが粒麹(バラ麹)。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

●板麹
蒸した米を室箱に入れ、種麹をつけてそのまま数日間おいて繁殖させたものが板麹。白い麹菌がふわふわと表面を覆っている。使うときには手でほぐして細かくする。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

市販品にはさまざまなものがある。麹だけで作ったサラッとして風味の強いもの、濃厚で甘みが強いものなど千差万別。材料が米と米麹だけのものがいい。好みのものを探してみては。

酒粕は日本酒の搾りかす。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

甘酒というともう一つ浮かぶのが酒粕。酒粕は米を米麹で清酒を造ったあと、酒を搾った残りを圧縮したもの。アルコール分を含み、アミノ酸やビタミン、酵母などさまざまな健康成分を含む。圧縮したままの板粕、くずれたばら粕、やわらかく練って熟成した練り粕などがある。そのまま食べられ、粕汁などの料理にも使える。

塩麹の手作りは簡単。

【塩麹】\ たんぱく質をやわらかく!/
【塩麹】\ たんぱく質をやわらかく!/

米麹に塩と水を加えて寝かせるだけで塩麹が作れます。最初はポロポロで大丈夫かな? と思うくらいでちょうどいい仕上がりに。塩分は好みですが、腐敗せず、菌が元気なのは、10〜40%の間です。

一番実力を感じるのは肉や魚などのたんぱく質食材を漬け込んだとき。やわらかくなり、圧倒的なアミノ酸のうまみを感じます。野菜も減塩でおいしく食べられます。

【基本の材料 】
米麹 200g
塩(自然な塩) 20〜40g
水 300ml

【作り方】
1. 麹をほぐし、塩を加えてよく混ぜる。
2.分量の水を加えてしっかりとなじむまでよく混ぜる。
3.軽く蓋をするかラップをかけ、常温で発酵させる。

※夏なら2〜3日、冬は1週間程度で使える。できあがったら冷蔵庫に入れて保存。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

板麹は1粒ずつばらばらになるまでほぐしてから塩を加え、まんべんなく混ぜる。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

分量の水を加える。この段階では水が足りないと感じるかもしれないけれど大丈夫。毎日1回混ぜる。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

\Arrange/
●きゅうりの塩麹漬け

きゅうりは乱切りにして保存袋に入れ、塩麹大さじ1〜2を加えて外側から軽くもみ、2〜3時間漬ける。冷蔵室で2日程度日持ちする。

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\Arrange/
●ミニトマトの塩麹あえ

ミニトマト1パックはヘタを取って保存袋に入れ、塩麹大さじ1〜2を加えてなじませ、2〜3時間おく。冷蔵室で2日程度日持ちする。

自家製の甘酒が絶品!

【甘酒】\自然な甘みは 飲む点滴といわれる/
【甘酒】\自然な甘みは 飲む点滴といわれる/

おかゆに米麹を加え、50〜60度に保温して麹の力で米のでんぷんを糖に変えて甘みを出すのが甘酒です。最後に温度を高くすると甘みが増し、日持ちします。デザートにアレンジしたり、肉や魚をやわらかくする働きもあります。

【材料】
米麹 200g
おかゆ 米1合分
水  400〜900ml

【作り方】
1
.おかゆは米1合に対し、水750mlくらいで炊き、炊飯器に入れて水を加え、55〜60度に冷ます(水の量は好みで)。
2.ほぐした米麹を加えてよく混ぜ、炊飯器の保温機能を使って50〜60度を保つ。完全に蓋をすると温度が高くなってしまうので、蓋を開けてふきんなどをかけておいてもいい。
3.8時間程度で完成。味をみて十分甘みが感じられたら成功。冷まして冷蔵庫で保存する。

※甘酒はどんどん発酵が進むので、ここで一度80度くらいに温度を上げて発酵を止めるとおいしさが保てる。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。
手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

少量作りたいときは温めた保温ジャーに温かいご飯80gを入れて65度くらいの湯160mlを注ぎ、ほぐした麹80gを加えてきっちり蓋をし、8時間ほど保温しておく。温度が冷めないように布などで包んでおくといい。甘みが足りない場合は、少量の湯を足し、さらに保温する。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

\温めても冷やしても!/

夏は冷蔵庫で冷たく冷やし、寒い季節には温めるとポカポカ。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

\Arrange/
●大根のべったら漬け風

大根は3〜5mm厚さに切って保存袋に入れ、全体になじむ程度の甘酒を入れ、外側からもんでなじませ、冷蔵庫で2〜3時間漬ける。2〜3日日持ちする。

手作りがおすすめ、健やか作りおき塩麹と甘酒。

\Arrange/
●鮭の甘酒漬け

切り身の塩鮭を保存袋に入れ、鮭1切れに甘酒大さじ1程度を加えてよくなじませ、冷蔵庫で一晩くらい漬ける。甘酒をこそげ落として普通に焼く。魚は何でもいい。肉もおすすめ。

  • 石川森夫

    石川森夫 さん (いしかわ・もりお)

    東京農業大学応用生物学部醸造学科准教授 博士(農芸化学)

    東京農業大学農学研究科農芸化学専攻博士後期課程修了後、同大学応用生物科学部醸造科学科で、助手、講師を経て現職。『酢の機能と科学』(朝倉書店)、『乳酸菌とビフィズス菌のサイエンス』(京都大学学術出版会)、『発酵・醸造の疑問50』(成山堂書店)などの共著がある。

    ※プロフィールは取材時のものです。

  • 野本康二

    野本康二 さん (のもと・こうじ)

    東京農業大学生命科学部 分子微生物学科教授

    東京農工大学獣医学科卒業後、ヤクルト中央研究所勤務。この間に九州大学、科学技術庁放射線医学総合研究所、米国コロンビア大学がんセンター、科学技術庁放射線医学総合研究所などで研究に従事。日本細菌学会、日本生体防御学会、日本感染症学会に所属。著書に『腸内フローラの科学』(日刊工業新聞社)など。

    ※プロフィールは取材時のものです。

『Dr.クロワッサン 免疫力アップの決め手、腸内環境を強くする』(2020年7月30日発行)より。

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