日々の食事に定着している発酵食。改めて発酵の基本を整理してみましょう。
発酵とは、微生物が食材を変化させ、おいしいと感じる成分や体にいい成分が生まれるなど、人にとってメリットのある状態に変えることを指します。一方、人に有害なものに変わるのは腐敗です。
発酵食が体にいい理由はさまざまです。乳酸菌やビフィズス菌など、もともと腸内で活躍しているよい菌を、食事からも補って腸内環境をよくする働きを応援するのが最も直接的ですが、麹菌や納豆菌は消化酵素を作って消化を助けるので、胃腸の負担を減らし、間接的に体にいい影響を与えます。
納豆菌が作るナットウキナーゼという酵素には、血栓ができにくくする効果があり、出血を止めるビタミンKも発酵によって生まれる成分です。
同様に酢酸菌は免疫力を上げる働きを持ちますが、実は酢は製品にする前に濾過(ろか)されるので、通常は酢酸菌を含みません。
しかし、酢酸菌が生み出した酢酸は、腸内を酸性にすることで悪玉菌が暮らしにくくし、腸内環境を整える働きがあります。他にも血糖値を安定させたり血圧を下げるなど、多くの効果が認められています。
微生物がストレートに健康に関わる場合と、食材を変化させて体にいい成分を作り、二次的によい影響を及ぼす場合とがあるわけです。保存性が高くなり、食物が腐敗しにくくなるのも、健康を守るための昔の人の暮らしの知恵だといえるでしょう。
なにより、いずれも食材をおいしく変えたり、独特の香りが生まれたりするのが、受け継がれてきた理由でしょう。
日本にはいたる所に多くの発酵食があります。長い年月、日本人の健康を支えてきた発酵食にはそれだけの魅力があるということです。