からだ

“ゆるゆる漢方家”による、のびのび過ごす春の養生。

薬をのむほどじゃないけど、なんとなく調子が悪い。そんな季節の不調が毎日の暮らし方と食材だけで改善します。
毎日、店頭で健康相談を行い、漢方の理論をやさしく伝える“ゆるゆる漢方家”櫻井大典さんに聞きました。
  • 文・土田由佳 イラストレーション・浜野ふみ子

春の養生

ストレッチで体と伸ばし、ゆるゆるした服装でのびのびと過ごす。

苦味の食材で気の高ぶりを鎮める。

春は漢方において五臓の「肝(肝臓など)」に属する季節。肝には「蔵血(ぞうけつ)」といって、血を蓄える働きがあります。肝の働きが低下して血が不足すると、栄養が届かず乾いてしまうので、筋肉がつったり、不眠になったり、皮膚や髪の毛が乾燥しやすくなったりします。

肝の働きを妨げるものにはストレスのほか、過労、目の使いすぎ、睡眠不足などが考えられます。ですから、春はこうしたことに気をつけて、肝が元気に働けるようにしてあげることが大切です。

肝の働きを促すのは酸味です。うつうつとするときや、気分がすぐれないときは、酸味を適度にとるのがおすすめです。

ただし、肝が働きすぎると、消化器系の働きを必要以上に抑えつけてしまうことにも。食欲不振や下痢、軟便がみられる場合は逆に酸味を避けてください。そして、米やさつまいも、豆などの甘味の食材を適量とるように心がけましょう。

春は苦味を楽しむことも養生のコツ。というのも、春は自然界の陽気の高まりに沿って、体の中のエネルギーも高ぶり、ともするとのぼせたり、そわそわしたりしがちになります。ふきやたけのこ、よもぎなどの苦味の食材は、これらを鎮める力があります。苦味には、体内の不要物を外に出す働きもあるため、冬の間にためこんだ不要物を外に出してくれるのです。

ただし、元気がない人、もともとうつが強く、やる気が低下している人は、苦味をあまりとる必要はありません。

古典からひもといたゆるやかな生活。

春の養生について古典をひもとくと、次のような内容が書かれていました。

・遅く寝ても早く起きる。
・心も行動も言動も、そして服装 もゆったりと。
・イライラは禁物、何事も受け流すように。
・肌あれ、イライラには春の野草を食べる。
・酸味は少なめに、自然な甘味を多めにするのがおすすめ。
・伸びやストレッチをしてしっかりほぐす。

つまり、春は心と体をゆるめてのびのびと過ごすことが大切ということ。そうすることで、肝が正常に働き、心も体も安定しやすくなるわけです。

【不眠】寝なくても明日は来る!の気持ちで。

春になると、いつも眠れるのになぜか最近眠れないという人が出てきます。これは、春の陽気の高まりのせいかもしれません。気候が落ち着いて、体が慣れればよくなることもありますので、気にしないことも大事です。

漢方では不眠をストレス過剰タイプと血が足りないタイプに分けます。ストレス過剰タイプは、ストレスが熱を生み、精神的に不安定になったり、気が高ぶったりして寝つきが悪くなります。血が足りないタイプは、体を養う血が不足して、気分が落ち込んだりして熟睡しにくくなってしまいます。

どちらのタイプにもおすすめの食材は、熱を冷ます力と血を補う力を兼ね合わせているレタスです。湯引きしていただきましょう。

それと、寝るときは時計を見ないほうがいいですね。「あと何時間しか寝られない」というネガティブな自己暗示にかかりますから。寝ても寝てなくても明日は来るんです。

【のどの痛み】ミントティーで炎症の熱を鎮める。

のどに痛みがあるのは炎症が起きているから。熱を取り、潤いを与えることが大切です。

まずは温かいミントティーを飲みましょう。ミント(ハッカ)には、余分な熱を冷ます作用があります。ゆっくり一口ずつ飲んでいくと、スーッとしてくるはずです。アイスティーにすると、お腹が冷えて不調のもとになるので注意。

切った生の大根にハチミツをかけた「ハチミツ大根」もおすすめです。昔から民間療法として、のどが痛いときに食べるといいといわれてきました。漢方でみると、大根には呼吸器系を潤して咳を止める力があります。また、ハチミツには乾燥を防ぐ働きが。乾燥で痛くなったのどには、ハチミツ大根は効果的ということなのです。

ほかに、生のれんこんをおろし、その汁を飲むのもいいです。れんこんには呼吸器系の炎症を鎮め、潤いを補って乾燥を改善する作用があります。

【憂うつ】早起きして日光を浴びること。

春はイライラしたり、憂うつになりやすい季節。落ち込みやすいのも、ちょっとは春のせいもあるわけで、そんなに気にしないほうがいいです。

憂うつで何もしたくないをどうにか改善したいときは、まず早く寝て、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びること。漢方では、太陽がもつエネルギーが体を温めて元気にしてくれると考えるからです。前の晩にいくら夜更かしをしても、翌朝はいつもどおりの時間に起きること。いつものリズムを崩さないことが大事なのです。

そして「よく寝た! 今日もいい日だ!」と一言つぶやきます。これをだまされたと思って2週間くらい続けてみてください。しんどいときは誰にでもあります。そんなときはとにかく無理をしないこと。無理をすると、だいたいろくなことにならないです。

こういうときに食べたいのはみかんなどの柑橘類。酸味が気持ちを安定させてくれます。

櫻井大典

お話を伺ったのは

櫻井大典 さん (さくらい・だいすけ)

ゆるゆる漢方家

「成城漢方たまり」 で健康相談を行っている。アメリカの大学で心理学を学び、帰国。国際中医専門員。『食べる漢方』(マガジンハウス)監修、主な著書に『まいにち漢方食材帖』(ナツメ社)など。

『Dr.クロワッサン 不調が消える、ふだん漢方』(2020年1月28日発行)より。

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