からだ

“ゆるゆる漢方家”による、暖かくしてがんばらない冬の養生。

薬をのむほどじゃないけど、なんとなく調子が悪い。そんな季節の不調が毎日の暮らし方と食材だけで改善します。
毎日、店頭で健康相談を行い、漢方の理論をやさしく伝える“ゆるゆる漢方家”櫻井大典さんに聞きました。
  • 文・土田由佳 イラストレーション・浜野ふみ子

冬の養生

こもって、暖かくして、がんばらないで、春に向けて温存。

防寒保温とウォーキングで腎を守る。

冬と関わりが深い「腎(腎臓、膀胱など)」は、寒さが苦手。腎を守るには、防寒保温が大切です。特に足腰は冷やさないようにしましょう。また、歩くことも大切です。腎を支えている足腰の筋力を鍛え、血行をよくするからです。

頭や関節も冷やしてはいけません。頭にはたくさんの毛穴があり、冷えの邪気はそこから入り込んできます。そうなると、血流が悪くなり、頭痛を発生させることにも。

また、関節にはさまざまなツボが集まるので、冷やしてしまうとそこから内臓に冷えが伝わり、機能が低下します。関節は冷やすと痛みやすくなり、関節炎の原因にもなるので気をつけてください。

冬は寒さと同時に、乾燥の季節でもあります。空気の乾燥は、呼吸するだけでも体内の潤いを奪います。ですから、体を温める食材と一緒に、潤いを補う食材もとる必要があります。

潤いを補う食材には、豚肉、かに、えび、カキ、白菜、長いも、ゆり根、きくらげ、梨、柿、豆腐、黒豆、オリーブオイルなど。唐辛子やしょうがなど辛味が強いものは、発汗を促して潤いを奪われてしまうためひかえましょう。

気持ちの面では守りが大切。

冬はエネルギーを消耗しやすいので、激しい運動をしたり、たくさん汗をかいたりするのは禁物です。適度な運動は抵抗力を上げて冷えを改善してくれますが、激しすぎる運動は、陽気を消耗してしまい、冬を元気に過ごせなくなります。「冬はこもる」がいちばんです。

そして、いつもよりほんの少し早く寝て、ほんの少し遅く、太陽が昇ってから起きるようにしましょう。太陽が昇っている間に、エネルギーが養われるとされているからです。

気持ちの面でも守りが大切です。新しいことをはじめたり、あれもこれもと気持ちを分散させるようなことはできるだけ避けたほうがいいです。冬の養生は「がんばらない」「現状維持」で、春に向けて温存しておきましょう。

【カゼ】赤いカゼは熱を取り、青いカゼは温める。

「カゼ」は漢方でいうと、自然界に吹く風が「邪気」を連れてきて、体の中に入り込み「風邪(ふうじゃ)」に変化した状態のことをいいます。風邪は自由に変化し、症状を頻繁に変化させる曲者。症状を見極めて、適切な処置をとることが大切です。

熱っぽかったり、のどの痛みのあるカゼを漢方では「赤いカゼ」といいます。この場合は、余分な熱を取ることが最優先。熱を冷まし、水分代謝を促進するりんごがおすすめです。乾いた咳が出るときは梨もいいです。

寒気がするタイプは「青いカゼ」といい、体を温めて寒気を散らすことが大切。体をしっかり温めるしょうがを入れたスープやしょうが湯を飲みましょう。

青いカゼのときは、お風呂に入ってしっかりと体を温めてください。赤いカゼの場合、お風呂はNG。さっとシャワーだけに。冷えているから温める、熱があるから温めない。考え方はシンプルです。

【記憶力の低下】鮭とマグロで気と血を補い、腎を強くする。

「昔のことは覚えているのに、今朝のことは忘れてしまう」「なんだか物忘れがひどい」などの記憶力の低下は、悲しいけれど老化のサイン。

漢方で老化は、エネルギーをためる腎の弱りと考えます。腎が弱ると、エネルギーである「気」や、酸素や栄養を運ぶ「血」をつくる力も弱まって、腰痛、筋肉や骨の衰え、知力や体力の低下などが見られるようになります。気と血を補って、腎の働きを強くすることです。

腎機能を高める力の食べ物としておすすめなのは鮭とマグロです。どちらも気と血を補い、さらに気血のめぐりをよくする働きがあります。腎を補う力のある黒ごまと合わせて食べれば効果アップ。焼き鮭やマグロステーキにふりかけてもいいでしょう。

黒きくらげもおすすめです。水で戻した黒きくらげを醤油とごま油であえるだけの「黒きくらげのあえもの」は簡単にできて、アンチエイジングの強い味方になります。

【冷え】羊肉を食べて水を飲みすぎない。

冷え性の人は、温かい服装をする、これが何よりも最優先。厚いストッキングや、くるぶしを覆う靴下がマスト。首まわりや手首もしっかり覆って素肌をさらさないようにしましょう。

私たちの体は血液が全身をめぐって一定の体温を保っていますが、血液がドロドロになって流れが悪くなったり、血液が足りなくなると体が冷えてしまいます。冷えは体の根本的なエネルギータンクである腎を傷つけます。腎が弱ると冷えるばかりでなく、足腰や耳、髪なども弱まります。血行をよくしたり、血や腎を補う効果のある食材をとりましょう。

おすすめは羊肉。体を温める作用が非常に強く、手足の冷えをはじめ、全身を温める効果があります。羊肉が手に入らなければ鶏肉でもOKです。

冷え性の人は、水の飲みすぎにも気をつけてください。毎日たくさんの水を飲むことがいいようにいわれていますが、一概にいいわけではありませんから。

櫻井大典

お話を伺ったのは

櫻井大典 さん (さくらい・だいすけ)

ゆるゆる漢方家

「成城漢方たまり」 で健康相談を行っている。アメリカの大学で心理学を学び、帰国。国際中医専門員。『食べる漢方』(マガジンハウス)監修、主な著書に『まいにち漢方食材帖』(ナツメ社)など。

『Dr.クロワッサン 不調が消える、ふだん漢方』(2020年1月28日発行)より。

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