女性ホルモン補充療法(HRT)を受けるとき内診もあるのでしょうか。【88歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子
Q. 女性ホルモン補充療法 (HRT)を受けるとき 内診もあるのでしょうか。
月経がなくなって2年になります。カラダが重くなって、疲れやすいし、肩こりがひどくなる一方です。関節痛もあって、更年期障害だと思っています。HRTを試したいのですが、どんな検査をして、どんなふうに診察がすすむのでしょうか? 内診はありますか? 子宮頸がん、乳がんの検診は自治体で2年に1度受けていますが、妊娠や出産の経験はなく、ちゃんと婦人科にかかるのは実は初めてなのです。(T・Oさん 52歳 会社員)
A.血液検査、内診は基本。 医師の考え方次第でHRTをトライアルで始めることも。
婦人科検診を定期的に受けていても、内診のハードルが高いというお気持ちはわかります。どんな検査があるのか、お伝えしましょうね。
下の表を見てください。
【「いざ、受診となったら」知っておくこと】
●まずは、診察の流れを知る
問診:HRTを行う目的を明確にする(何のためにするのかを決める)
↓
必要な検査を受ける
↓
HRTの使用法と種類を考える(自分の好みも大切に)
↓
医師と相談して決める
●必要となりうる検査内容を知る
1.身長、体重、血圧
2.血液検査(女性ホルモン値、卵胞刺激ホルモン値、肝機能、脂質、腎機能、血糖、凝固系、甲状腺ホルモンなど)
3.子宮頸がん検診・子宮体がん検診(超音波も含む)、乳房検査
4.骨量測定、動脈硬化度測定(できるなら受けたほうが参考になる検査)
検査内容は婦人科によって多少の違いはあるが、あらかじめ上記の内容は知っておきたい。保険診療か自由診療かで費用も異なってくる。
参考:「HRT(ホルモン補充療法)受ける? 受けない? HRT意思決定ガイド」(作成・江藤亜矢子、中山和弘)より
診察の流れで大事なのは、HRTの目的をどこに置くのか、T・Oさんが考えておくことです。どんな不快症状を治療したいのか。仕事のために長期で治療するのか。まずは、1年くらい続けてみたいのか。今のお気持ちを整理しましょう。
HRTの経験豊富な医師に出会えれば、いろいろなケースをふまえて治療法を選択できます。医師の考え方にもよりますが、内診前に、1カ月くらいHRTで様子をみることもあります。その場合は、様子を報告したのちに、検査を受けます。
必要となりうる検査内容ですが、上の血液検査では、女性ホルモン値や卵胞刺激ホルモン値などを測ります。基本、子宮がん検診はしますので、それが内診です。医師にもよりますが、腹部エコーで卵巣の腫れをチェックする場合もあります。直近で自治体の検診を受けている場合は、結果を持参しましょう。4の骨量は、ぜひ受けてほしい検査です。動脈硬化についても。定期健康診断の結果があれば、持参してください。
私は、記録をつけられるように、患者さんには「女性健康手帳」を利用してもらっていました。記録が残り、体調管理がしやすいことと、検診を忘れずに受けるというメリットがあります。市販品や自治体で作っている場合もあるようなので、お住まいの女性健康支援センターや保健所などに問い合わせてみてくださいね。
私は今年88歳になりましたが、今でも毎年子宮体がん、頸がん、乳がんの検診を受けているんですよ。HRTを始めると、1年に1回は婦人科系のがん検診をしますので、2年に1回の自治体と交互に受ければよいのではないでしょうか。
※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。
HRTの目的を自分なりに考えておこう。(Dr.野末)
『クロワッサン』1035号より