高橋ひとみさんも悩んでいた。「免疫力」の正体と、その上げ方。
撮影・岩本慶三 スタイリング・おおさわ千春 ヘア&メイク・木村真弓 文・石飛カノ
Q.免疫力って、そもそも何ですか?
免疫力とは外から入ってきたウイルスなどの「自分ではないもの」を攻撃する力のこと。マクロファージなどが関わる「自然免疫」と、リンパ球が主役の「獲得免疫」の2種類があります。
「自然免疫」は異物が入ってくると真っ先に攻撃するのに対して、「獲得免疫」は特定の異物を攻撃する抗体を増やして強力な一斉攻撃を仕掛けます。また「獲得免疫」には一度攻撃した異物の情報を記憶するシステムがあるので、退治した異物に対する抵抗が身につくという特徴があります。
こうした免疫システムをアーユルヴェーダでは「自然知性」のひとつと捉えています。母体の中で受精卵が細胞分裂を繰り返し、さまざまな臓器や筋肉、骨が作られていきますが、このプロセスは勝手に進んでいくものではなく、そうなるように何かが動かしているのです。これが「自然知性」です。
赤血球や白血球、血小板などが関わる免疫システムを働かせる力もまた、「自然知性」です。「自然知性」は私たちが生まれながらに持っているもの。頑張って身につけるというよりも、ただ自然に従えばいいだけの話なのです。
Q.免疫力を上げると風邪をひかないしくみとは?
風邪のウイルスは細胞の中に入り込むタイプの異物。これは「自然免疫」だけではうまく対処できないのでリンパ球による「獲得免疫」が抗体を作って攻撃します。というのが西洋医学の考え方。アーユルヴェーダでは、風邪というのはある意味、体内に溜まってしまった毒素を浄化してリセットしようとする自然なシステムと考えます。風邪をひくと熱が出ますが、これは体が熱を発して毒素を燃やし、元の状態に戻ろうとしているということ。
本来なら、しっかり水分をとって休息をとれば、「自然知性」である「自然免疫」や「獲得免疫」が働いて異物を取り除いてくれるはず。最近では風邪をひくとすぐに薬を飲む人が少なくありませんが、解熱剤などで熱を下げてしまうと、「自然知性」そのものが弱って逆にいつまでも風邪が長引くことに。「自然知性」がさらに弱ってしまうと、風邪をひいても毒素を燃やす熱を出せず、関節の痛みやだるさなどを感じます。
「自然知性」が活性化して強い人は、まず風邪をひきません。インフルエンザのようなウイルスが体内に入ってきても、免疫システムが適切に駆除をするので発病しないのです。
Q.免疫力って、どうやって上げるの?
アーユルヴェーダでは「風(ヴァータ)」「火(ピッタ)」「水(カパ)」という3つの体質のバランスが崩れてくると、「自然知性」がうまく機能しなくなると考えられています。逆に3つの体質のバランスがうまくとれていると、さまざまな臓器の働きが調和して、本来持っている免疫力が発揮されます。
その免疫力を支えているのが胃腸の消化力。食べたものが口から食道を通って胃や小腸に届き、小腸の壁から栄養素が吸収されます。このとき胃調の働きが悪いと栄養素は未消化のまま体に吸収され、毒素となります。
毒素とは例えば、過剰な糖、コレステロール、中性脂肪や尿酸など。こうした毒素が体に溜まっていくと代謝が下がり、3つの体質のバランスが崩れて免疫力の低下や病気に繋がります。
そこで、肝心の消化力を高めるために最も有効な方法が、毎日、白湯を飲むこと。よく沸かして飲む白湯には「風」「火」「水」の要素がすべて含まれているので、全身の臓器の調和をとるためには最適の飲み物です。
Q.免疫力を上げると、いいコトありますか?
免疫力が高まることのメリットは、風邪などの病気を寄せつけないことだけではありません。生命は常に全体で成り立っています。さまざまな臓器や組織はそれぞれ別々の働きをしていますが、それらがきちんと調和していることが免疫力アップのための大切な要素。
もともと人の体は「風」「火」「水」の体質のバランスが保たれて全体が調和しています。ところが、日常生活での食事や運動、睡眠のとり方などによって自らバランスを崩してしまっているのです。
免疫力が上がるということは、体質のバランスが整って、「自然知性」が働くということ。その結果、朝の寝覚めがよくなり、仕事にやりがいを感じることができて、日々の生活に喜びが生まれます。仕事の評価や地位、名誉といった外から与えられたもので幸福を感じることもありますが、それ以上に大事なのは自分の内側にある幸福。心が元気で体も元気で、やりたいことがある人生です。その土台となるのが免疫力なのです。