料理研究家 ワタナベマキさんが、初めて猫を迎え入れた“大きな変化”
撮影・天日恵美子 文・黒澤 彩
料理研究家 ワタナベマキさん(49歳)×ハットリ(4歳)、ハナ(4歳)
ワタナベマキさんの家に2匹の保護猫がやってきたのは4年前、ワタナベさんが44歳の時。8月8日だったのにちなんで、名前はハッちゃんことハットリくんと、ハナちゃんに。
「ハッちゃんの名前は、息子が好きだった『名探偵コナン』の登場人物からとっています。ハナちゃんは保護先ですでに名付けられていたので、そのままでいいね、ということになりました」
猫を飼おうとしたのは、実はこれが2回目。前回は息子が小学生のときで、実際に会いにいったところで初めて、息子の猫アレルギーが判明した。「どうしても猫を飼いたい!」と何度となく訴える息子の根気に負けて、数年後にあらためて検査を受けたところ、なんとアレルギーが治っていたそう。
「じゃあ飼えるね、ということで保護猫の情報をもらい、会いにいきました。ハナちゃんだけを譲ってもらうつもりだったのですが、ハッちゃんが足元にすり寄ってきて、『連れてって』って言っているみたいで。いや、言っていました。もう、かわいくて。それで2匹連れて帰ることにしたんです」
のんびり屋で甘えたがりのハッちゃんは、生まれてすぐに兄弟たちと捨てられていたところを保護されたので、他人を警戒する素ぶりがまったくない。ワタナベさんの仕事仲間のあいだでもすっかり人気者なのだそう。
「でも、ハナちゃんは知らない人が来ると今日みたいに隠れてしまって出てきません。2カ月間くらい野良猫だったので、野性的なところがあるのかもしれませんね。ごはんへの執着もすごいんですよ。ハッちゃんが食べ残した分まで平らげて、お皿もぺろぺろ舐めてきれいにしてくれます(笑)」
ハナちゃんの食への執念はすさまじい。ある時、ワタナベさんが撮影に使うブリの切り身を出しておき、ほんの束の間キッチンを離れて戻ってきたら、あれ? 1切れ消えている!
「ハナちゃんが、ブリを咥えてベッド下に隠れていました……。私がいなくなる隙をねらっていたんですよね」
思いがけず夫婦のかすがいにも? 話すのは猫のことばかり
性格も性別も違えば、人間の家族との関係もそれぞれ。ハッちゃんは毎朝ワタナベさんのベッドに来てゴロゴロし、ハナちゃんは夫にお腹をなでてもらうのが日課。でも、2匹とも息子のことがいちばん好きで、いつも一緒に寝ているそう。3兄弟のような微笑ましい姿に、ワタナベさんも猫たちを迎えて本当によかったと振り返る。
「私自身、猫を飼ったことがなかったし、料理の仕事をしているので最初は心配もありました。毛の掃除が大変そうだなとか。きっと、息子の強い願いがなければ飼うことはなかったはず。でも今では、ハッちゃんとハナちゃんのいない毎日なんて想像できません」
2匹が来てからは、家族の話題は猫たちのことばかり。そういえば会話がめっきり減っていた夫とも、猫のことでよく話すようになったそう。子は鎹というけれど、ペットも同じように夫婦のコミュニケーションに一役買ってくれる存在のようだ。
大学生になった息子は、近い将来ここから巣立つのかもしれない。それでも、2匹はまだまだ居てくれる。
「息子が小さいうちは飼うのが難しかったでしょうし、結果としてですが、いいタイミングで家に来てくれたのかなとも思います。長生きしてほしいから、私もこの子たちのためにずっと元気でいないといけませんね」
『クロワッサン』1140号より
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