冬を健やかに乗り切る、基本の「き」。冬のからだ悩み対策。
撮影・玉置順子 スタイリング・白男川清美 イラストレーション・糸井みさ 文・小沢緑子 撮影協力・AWABEES、UTUWA、TITLES
外は寒く空気は乾燥してカラカラで、体にとってつらい季節の始まり……。
「冬は寒さからどうしても体が冷えて、血行が悪くなりがち。また、体を動かす機会が減ると血行不良がさらに悪化。空気の乾燥で皮膚や粘膜も乾燥しますし、日照時間の短さも心身に悪影響を与え、さまざまな不調につながります」と、漢方専門医の渡邉賀子さん。
さらに冬は戸外は冷えるのに、電車や商業施設などの屋内に一歩入ると暖房の影響で汗をかくほどの暑さで、体にとって過酷な環境が生じがち。
「日本には四季がありますが、本来人間の体は温度差があると、それに適応するまでにある程度の時間が必要。体は徐々に慣れていくため、急に寒暖差が起こると対処できない。体調不良が起こるのはもっともなことです」と、呼吸器内科専門医の大谷義夫さん。
そんな不調を引き起こす原因を知ることは、病気を未然に防ぐためのカギに。冬に多く用心したい症状や日常でできる予防法も教えてもらった。
冬のからだトラブル【原因】
冬の不調を引き寄せる、5つの要警戒キーワード。
気温の低下
冬の不調の原因が、まず気温の低下。
「寒くなると血行が悪くなり、全身の細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなります。内臓が冷えると働きが悪くなるし、体温が低下すれば免疫力が下がり風邪を引く原因にも」(渡邉さん)
最近、冷えは一年じゅう不調を招く元凶ともいわれている。
「本格的に寒くなるこれからの時季、ほかの疾患の症状を悪化させることもあり、より注意が必要です。冷えから関節リウマチの関節痛が強くなったり、気管支ぜんそくなども症状が悪化することがある。大きな病気を寄せつけないためにも、冷え対策を忘れないでほしいですね」(渡邉さん)
寒暖差
人間は寒さを感じると自律神経の働きで末梢血管がギュッと収縮して血液を体の中心部に集め、体温が奪われることを防いでくれるが、
「自律神経が対応できる寒暖差は7℃くらいまでです。寒い外と暖房が効いた暑い室内の行き来が多いと、自律神経が体温を調節しようとがんばりすぎてバランスが乱れ、不調があらわれやすくなります」(渡邉さん)
「気温が3度下がるとぜんそくが悪化し、7度下がるとアレルギー性鼻炎に似た症状がでる血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)になりやすく、10度下がると血圧が急上昇するといわれます。寒暖差には要注意です」(大谷さん)
空気の乾燥
空気が乾燥し湿度が低くなる冬。それが原因で流行する病気というとインフルエンザが思い浮かぶが、
「最新の研究では湿度は高くても低くてもインフルエンザウイルスの感染力は変わらなかったとのデータがあります。ただし、のどの免疫力を低下させないために、湿度の管理は大切。のどを乾燥させないよう注意する必要があります」(大谷さん)
皮膚にとっても空気の乾燥は大敵。
「皮膚が乾燥すると、かゆみや湿疹など皮膚のトラブル全般につながります。部屋の湿度は50〜55%ほどに保つ、保湿剤を塗るなど、乾燥を防ぐ対策がやはり基本中の基本です」(渡邉さん)
日照時間の減少
日が短くなることも不調の一因に。朝起きて太陽の光を浴びることで、人間は体内時計をリセットして一日の生活リズムを整える。また、日中、日光の下で活動すれば、脳内で精神を安定させる物質・セロトニンが分泌される。太陽光は心身の健康を保つうえで欠かせない要素なのだ。
「毎年、秋から冬にかけて、気分が落ち込む、気力が低下する、体がだるい、いくら寝ても眠いなどの症状を繰り返すなら、その不調の原因に日照時間の減少が考えられます」(渡邉さん)
肩こりなどの血行不良や睡眠障害も、日照時間の短さによる日中の活動量の減少が影響していると考えられている。
運動不足
寒いと体を動かすのがつい面倒になり、普段より運動不足になりがち。
「一日に体が生み出す熱エネルギーの約6割は筋肉で作られています。運動量が減ると発熱量も少なくなり、冷えをはじめ血行不良からくる不調をさまざまに引き寄せる一因に。特に女性は筋肉量が少ないので、冬の間もなるべく体を動かし筋肉を維持して全身の血行を促したいもの」(渡邉さん)
筋力キープ以外にも運動のメンタル面での効用も見逃せない。
「爽快感が得られたり、気持ちが安定する効果があるのも運動をすることのメリット。少しずつでも毎日続けられるものを行うことが大切」(渡邉さん)
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