親指から薬指にかけての4本の指が痛い、しびれる。そんな時、真っ先に疑われるのが手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)。これもホルモンバランスの乱れがおもな原因で起こり、更年期の女性に多い。
「耳慣れない名前かもしれませんが『手根管』とは手のひらの付け根にある、骨と靭帯に囲まれたトンネルのような組織です。この中に9本の腱と正中神経という1本の神経が走っているのですが、女性ホルモンのゆらぎによってこの腱の周りにある滑膜が腫れて正中神経を圧迫します。正中神経は親指から薬指までの4本、正確には薬指の親指側までの3本半の指を司る神経。なので症状が出るのもこの範囲だけ。大きく言うと小指以外ということになりますね」
おもな症状は痛みとしびれ。
「なかでも手首を曲げる動作で痛みやしびれが出やすいというのが特徴です。自転車、特に“ママチャリ”のハンドルを握る時や車の運転、または肘をついて本を読んでいる時に痛みやしびれを感じるという人が多いですね。また夜中や明け方に症状が強くなる傾向もあるので、痛みで目が覚める、朝起きてしびれを感じるという人も。また手首に原因があるにもかかわらず、肘や肩のだるさを訴える場合も多いです」
とはいえ、それは初期症状のうち。
「ひどくなると一日じゅう痛いという人もいますし、さらに悪化すると感覚が低下して、熱いものを触っても熱いと感じなくなったり、親指の筋肉がやせて箸やペンがうまく持てなくなったりするなど、日常生活への影響も次第に大きくなってしまいます」
治療は、まず腫れた滑膜を縮めるよう働きかけることから。
「初期ならエクオールを摂取することでゆるやかに症状をおさえていきますが、それでも改善しない場合はステロイド注射が有効です。腱の腫れを引かせて滑膜を縮める効果は、ステロイドが一番なんです。でも腱近くにステロイドを打つと、腱が弱くなりやすいというリスクもあります」
濃度や回数を制限しつつステロイドを注射し、症状を落ち着けてからエクオールのサプリメントなどで安定した状態を維持する。
「あくまで女性ホルモンのバランスが原因なので、ステロイドだけでは戻ってしまいやすくなります。症状を繰り返す場合やすでに悪化してしまっている場合は、靭帯を切開して神経の圧迫を取り除く手術を行います」
でもまずは初期のうちに腫れや痛みをおさえることが大切。
「手首に違和感を感じたら、エクオールを摂取してしばらく様子を見てもらっても。それでも長引くようであれば、手外科を受診してください」