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『雑草が教えてくれた日本文化史』稲垣栄洋さん|本を読んで、会いたくなって。

しなやかに生きる雑草はどこか日本人に似て。

いながき・ひでひろ●1968年、静岡生まれ。農学博士。農林水産省などを経て、現在は静岡大学大学院教授。『怖くて眠れなくなる植物学』『キャベツにだって花が咲く』など著書多数。「雑草の特徴を利用する研究が盛んなのも日本独自の動きです。やっぱり愛着があるんでしょうかね」

曖昧ではっきりしないと言われる国民性、現代に残るアニミズム、高いとは言えない環境意識や自然であることを良しとする美意識。「雑草」をキーワードに考察すると、よくも悪くも等身大の日本人が見えてきた。著者の稲垣栄洋さんは雑草学を専門とする研究者だ。

「雑草を研究していると言うと、日本では『あ、そんな学問があるんですか』と不思議がられます。欧米ではインフルエンザの研究と同様に、防除の対象として当然研究すべきという反応なんですが」

日本では道端に生える雑草に精神性を見出して「雑草魂」と呼んだり、ふだん雑草として扱っている植物を食用や薬用にしたりもする。利用できる雑草をハーブ、それ以外をウィードと明確に区別する欧米とは異なる独特の自然観。稲垣さんは、研究を進めるなかで、日本人と雑草の関係について思いを馳せるようになったのだという。

「ヨーロッパでも日本と同じように耕作放棄地が問題となっていますが、長い間放置していても草ぼうぼうにはならないんです。

土地の力が弱くて雑草もそんなに生えない。日本は高温多湿で二毛作ができるくらい豊かな国土ですから雑草の種類も勢力も強い。だから日本人は親の敵のように草むしりをして狭い土地の生産性をあげる。鎖国時代を思えばわかりやすいですが、この狭い国土でエネルギー、食料を自給できていたというのはすごいことです」

ただし、我々がイメージするほど雑草の生命力は強くはない。森や林には生命力旺盛な樹木が茂るので雑草の生える余地はなく、結果、雑草は人間の暮らしのそばに生息することが多いのだという。

「むしられるとか踏まれるとか、植物にとっては異常な状態です。自然界では起こらないことですから。雑草は弱いながらもこの1万年ほどで、人間の暮らしに対応した特徴を獲得してきているのです」

種子を残すため、著しく成長のスピードを速めたり、水や土が充分ではない場所にも根を下ろしたり。小さく咲いたり、変形したり。

「環境に合わせて変化し、しなやかに状況を乗り越えていく。どこか日本人に似てるかな、と思うんです。明治維新など歴史的な変化もありますが、地震や水害、数々の災害を乗り越え、適応していく。雑草と同じ、自らが変化せざるを得ない土地に暮らしている。そして伊勢神宮の式年遷宮もそうですが、同じ状態をずっと保つのではなく、更新することによって未来へ繋いでいく。雑草も日本人も、そういう強さをもっているんじゃないでしょうか」

エイアンドエフ 2,200円

『クロワッサン』965号より

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