そのハラハラドキドキは第一級のエンターテインメント。ページをめくる指がとまらないが、ラスト1行、重い現実を突きつけられる。
「僕たちが習った反戦のお話って無垢で純真なうら若き乙女が恋も知らずに死んでいった……というものでしたけど、それってものすごく違和感があったんです。じゃあ、ブスとババアは生き残ったのかよって。反戦思想が聖域みたいになってものを言えない雰囲気があった。銃弾を受けたことのない、僕のような世代が書くからこそ冷静でフェアなまなざしが欲しくて、100%自分の言葉で書こうと決めました。それなら検証も可能になりますから」
本作の主要なモチーフである、ボリビアへの移民について知ったのは20年ほど前のことだという。