『おしゃれなおばあさんになる本』田村セツコさん|本を読んで、会いたくなって。
おばあさんって怖いものなしの存在です。
撮影・千田彩子
子どもの時分から、おばあさんって、やさしいような怖いような不思議な存在感があるなぁと憧れていたという田村セツコさん。自身も79歳(!)になって、「最近、おばあさんっぷりが板についてきたわね、とよく言われるんですよ」。しかしお歳を聞いてもピンとこない。取材当日のファッションは、白い丸衿のブラウス、紺色のベスト、ふんわりした膝丈のスカートでまるで女学生のよう。何十年も好みが変わっていないそうだ。
「おばあさんらしく、ではなくて、自分らしくおしゃれをすればいいと思います。この本はね、もうわたしなんか、とか、歳だし、とか言っている女性にもっと自信を持ってほしくて書きました。おばあさんはダテにシワがあるのではないのです。シワの間には、膨大な経験と情報が挟み込まれているんです」
歳を取るということは、今まで良いことも悪いことも様々な経験をしてきているはずだ。経験はすべて宝物で、人間はそこからヒントをもらって生きている。
「だから宝物がいっぱいのおばあさんは、怖いものなしね。ああ、この先はもうない、なんて思うのはすごくもったいないですよ」
自分の足で歩ける、おいしくごはんが食べられる、本を読むことができる、というだけでうれしくて楽しくてしかたないということが行間から伝わってくる。
「シャンソンに “風のように気ままに” とか、 “それが人生” とか達観したフレーズがあるじゃない? それを日常に取り入れて自分の生活を考えてみると、人生のピークは過ぎ去ったんじゃなくて、今ここにあるように思えてくるんです」
本を読んだり、人から聞いたりして、いいな、と思った言葉はすぐに書き留めて部屋のどこかに貼っておくという田村さん。最近では、「外山滋比古さんの本に “深く考え込まずに風のように読んで風のように考えて” というフレーズを見つけてすごくおしゃれだな、と思って玄関に貼ってあります」
おしゃれというのは、決して着飾ったり、お金をかけた生活をしたりすることではない。生きかたそのものにあるのではないか。
「人間の指と同じように精巧なものをロボットで作ろうとしたら何億円もかかるんですって。それを手足にこれだけ持っている私たちってすでに大金持ちなんじゃないかしら(笑)」
どのページから読んでも田村さんが語りかけてくるようで、いつの間にか元気になれるエッセイだ。
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