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言葉をいじくりまわす面白さ。評・山田 航|話題の本、気になる本。

『倉本美津留の超国語辞典』倉本美津留

KADOKAWA 1,400円

 本物の国語辞典を模した重厚そうな装幀。しかし中身は、ひたすら日本語をおもちゃにして遊んでみせた珍妙な実験の記録である。

「自腹を切る」などやたら大げさな表現にツッコミを入れてみたり、「きみは分身していい身分なの?」と逆さにしても成り立つ熟語を並べて作文したり、「粗末」のように「お」を付けたら意味が変わってしまう言葉をコレクションしたり……。こんな実験の連続を私は「いやー、あるね。あるある」と思いながら読み進めていた。なぜなら私も大の日本語マニアで、似たような一人遊びを子どもの頃から辞書片手に繰り返してきたからだ。「承る」みたいな一字で五音も入る「お得読み漢字」、これ私も昔から「お得!お得!」と思ってたよ。ちなみに私は「字数と音数が完全に一致する人名」を集めるのが昔からの趣味である。賀来千香子とか尾野真千子という名前を見ると「これは恋?」ってくらいにドキドキしてしまう。最近ドキドキした大物ルーキーは宇宙飛行士の「油井亀美也」だ。

日本語のことわざ「月とすっぽん」にあたるものは英語では「チョークとチーズ」。和名では「土の竜」で、英名では「スパイ」の意味になってしまうのがモグラ。こんなふうに日英比較する章もあり、日本語と英語の感覚の違いがみえてきて面白い。

何か書きたいけれど、強く伝えたいことは特にない。そんな人にとってこの本は「言葉の使い方」のヒントになる。「思っていることを書け」と言われても一つも言葉が浮かんでこない人も、ルールを持ち込んで言葉を「ゲーム」化してしまうことでするする湧き出てくることがあるんじゃないか。何を隠そう私自身そんなタイプの人間だったのに、今ではこうして物書きになっている。言葉遊びは、最良の「国語教育」になりうる。

やまだ・わたる歌人。歌人集団「かばん」「pool」所属。左右社WEBサイトで「回り出づる悩み」を連載中。

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