いちいち数字が具体的だから説得力があるが、著者はさらに、さりげなく、現代のビールには五十パーセント以上の酒税が課せられているとも付け加える。読者はいろいろ考えさせられることになる。歴史とは終わった過去ではなく、こんにちただいまの生活に直接つながる意見の材料にほかならないのだ。
税金以外の話でも、この本はおもしろい話がたくさんある。日本最初の大金持ちは平清盛だ、というのは意表をつく指摘だし(それ以前はそもそも貨幣が普及していなかった)、廃藩置県のとき全国の殿様がほとんど抵抗することなく領地を政府にさしだしたというのも意外だろう。借金もまとめて引き受けてもらえたからだ。権利がほしくば義務も負うべし。語りくちの易しいのも読者にはありがたい。とにかく楽しく学べるのだ。日本がアメリカと開戦した理由については、ぜひ本文を。
この本には、女たちの好きな「真実の愛」はない。男たちの好きな「風雲の志」や「英雄の決断」もない。ただただお金の話がある。でもほんとうは、お金なら、男女どちらも大好きなんですよね。