と高野さん。当初はそうした辺境の民、マイノリティの暮らしや文化を描きたくて取材を始めたのだが、しだいに納豆そのものの魅力に気づき、とり憑かれてしまう。
「とにかく納豆は謎だらけ、謎が謎を呼んで、納豆の糸にぐるぐるに絡め取られてしまいました(笑)」
たとえば日本人なら、納豆は稲わらで作るものと思っている。だがアジアではバナナやシダなど、青い葉っぱで納豆を作る。納豆=糸を引くのはニッポンの常識だが、ミャンマーのシャン州の納豆は粘らないのにおいしかった。納豆の食べ方、料理法もさまざまで、固定観念が音を立てて崩れていく。
「とにかく研究者が少ないし、ネットの情報もないから、自分で現地に行って調べなければならない。その体験をもとに、帰国してから自分の手で納豆を一から作ってみる。夏休みの自由研究みたいで、楽しかったですよ」