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『空から見ててね いのちをすくう“供血猫”ばた子の物語』はせがわまみさん|本を読んで、会いたくなって。

供血猫の存在を多くの人に伝えたくて。

トリマーとして、都内の動物病院に7年間勤務。結婚を機に退職し、現在は主婦。3兄妹猫との日常をアメーバブログ「★★★毎日が猫パーティー★★★」にて発信中(ハンドルネームはプルメリアhttp://ameblo.jp/plumeria-0122/)。

撮影・森山裕子

つぶらな瞳の三毛猫に惹かれて本を手にすると、中に書かれていたのは、「猫好き」にもあまり知られていない事実だった。

「すべてではありませんが、輸血医療を行っている動物病院には“供血猫”が飼われていることがあります」

交通事故や内臓疾患で輸血が必要になったとき、その場で血液を提供してもらうため供血猫が欠かせないという。

「まだまだ世間には知られていない供血猫の存在をもっと広く知ってほしいとこの本を書きました」

輸血が必要になると、供血猫が暴れないように、まず鎮静剤を打ち、30〜60mlを採血。その後は採血量と同量の皮下輸液(点滴)が行われ、栄養のある食事が与えられる。つぎの採血までは、必ず数カ月は間を置くことになっている。

10年ほど前、トリマーとして働いていたはせがわまみさんは、勤務先の動物病院で「ばた子」と出会った。

「元の飼い主は、トイレがうまくできないばた子を安楽死させてほしいと動物病院に連れてきました。獣医は、しつければ大丈夫だと懸命に説得したのですが、受け入れてもらえなくて。供血猫として動物病院で飼うことにしたのです」

当時ばた子は2歳。5.5キロのコロコロした体形だが、警戒心が強く、いつもさみしそうな眼をしていた。

「身体を撫でたり、声をかけたりしているうちに、すぐに仲良しになりました。トイレもちゃんとできるようになったんですよ。私の仕事が終わってホッとしていると、スリスリと甘えてきたりして。いつかはばた子と暮らしたいと思うようになりました」

はせがわさんが撮影したばた子の表情が、日を追うごとに柔らかくなっていく。人間と暮らす動物にとって、愛情を持って接することが何よりも重要なのだと改めて気づかされる。念願かなって、はせがわさんがばた子を引き取ったのは、供血猫をリタイアした2年後。しかしそれはばた子の重い腎臓病による余命宣告と同時だった。

「一緒に暮らせてすごく幸せでした。猫と暮らしている人にぜひ知っていただきたいのは、血液のドナー登録です。行きつけの動物病院が輸血治療を行っていて、現在2〜7歳で健康な猫ならば、ドナー登録をすることができます。そうすれば、いざというときに、よその猫に血液を提供できるんですよ。助け合いの輪が広がっていったらといいなと思います」

集英社みらい文庫 640円
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