迷宮の古都ヴェネチアで現代アート。
〜第56回ヴェネチア・ビエンナーレ(前編)
文/写真・西島奈央(クロワッサン倶楽部読者モデル)
ヴェネチア来ました〜〜嬉しい〜〜でもどしゃ降り〜〜。
勝手にアートをおすすめしていますコラム「アートノタシナミ」。今回はヴェネチア・ビエンナーレです。
古都ヴェネチアと現代アート。このコントラストに魅了されてリピーターになり、今回16年ぶり5回目の訪問です。久しぶり〜♪
ヴェネチア・ビエンナーレは、120年続く世界最古で最大級のアートの祭典です。長い歴史の中で紆余曲折ありながらも今年で56回目。基本的に隔年開催で、例年6月の初旬からですが、今年はミラノ万博に合わせてか5月9日から始まりました。11月22日まで開催されています。
仕事で行ったこともありましたが、ほとんど個人旅行。いつも最終日には、また再来年来るために仕事がんばろう!と心に誓って帰途につくのです。今回ちょっと間があきましたが。
ヴェネチアは600年くらい前からほとんど変わらない街、と思っていましたが、時代の波はこんなところにも押し寄せていました。ご存知のとおりヴェネチア本島は、車や自転車は入れないので移動手段は徒歩か水上バス。迷路のように路地が入り組み小さな島が橋でつながっている構造なので、行きたい場所に着けないこともしばしば。北に向かうはずがなぜか西に西に向かってしまい、どうやっても抜け出せず元に戻ってやり直し、なんてことも一度や二度じゃありません。迷い込むと人通りもなく、路地はどんどん暗くなるので異世界に一人取り残された気持ちになります。まさにラビリンス!でもそれが楽しかった。
しかし、もうヴェネチアも迷宮ではなくなっていました。GoogleMapで現在地を確認できるのです! Wi-Fiがあれば迷い込んでも道案内してくれます。当たり前なんですが、これにはちょっと寂しいような気も…。Wi-Fi使わなきゃいいんですけどね。
ともあれヴェネチア・ビエンナーレ。メイン会場のジャルディーニ(カステッロ公園)とアルセナーレ(造船所跡地)だけでも企画展参加アーティスト136組、国別パビリオン53、会場以外のパビリオン36、その他関連企画は数知れず。体力勝負で行ってきます!
1日目 ジャルディーニ。曇天ときどき小雨。のちにどしゃ降り。
7月下旬にイタリア旅行に行った友人から、「41度だったわよ〜東京に帰ってきて涼しいと思った。」と恐怖の話を聞いていたので暑さ対策万全で行ったのに、着いた日から雷鳴、時にどしゃ降りで傘を手放せず。長靴が必要でした。
昔は入場口で、黒いサングラスをかけた10代じゃないかと思うような若い男子数人がモギリをしていて、パンフレットを渡す人、渡さない人を勝手に決めたりしていましたが(私は渡されない人だった)、今は近代的になりました。バーコード、ピッで入れます。ジャルディーニ、アルセナーレ共通券、大人一人25ユーロです。
ジャルディーニの中はとにかく広く、各国のパビリオンが点在しています。
雨足が激しくなってきたので、まずは正面の旧イタリア館へ。ここがメインの企画展示会場。企画展アーティスト部門で金獅子賞を獲ったエイドリアン・パイパーや思い出深いハンス・ハーケ(1993年ドイツ館の床をぶっ壊した作品は衝撃的でした)、天井をぶち抜いた作品のトーマス・ヒルシュホルンなどなど31アーティスト。中でも印象的だったのが、石田徹也の作品。2005年に31歳の若さで早逝した日本人アーティストです。今見ても新鮮。今回のテーマ「ALL THE WORLD’S FUTURES(全世界の未来)」にこのシュールな作品というのがアイロニカルでもありますが、こんなところで石田作品に出会えたのは嬉しい。
もうここだけでお腹いっぱいになりそうでしたが、まだまだ先は長く。外にでてみると雷鳴にどしゃ降り。どこかで一服したいけど、カフェテラスで雨よけのある席はいっぱい。
うろうろしていると、ありました企画展示館の横にレストランが。
イタリアじゃないとあり得ないこの大胆なデザイン!なんでも何年か前のアーティストの作品だそうで。失礼ながら目がチカチカして妙に落ち着きませんでした。落ち着かない・・・それがねらいかも!?メニューはモッツァレラサラダやラザニアなどのイタリアンで、上品でなかなか美味。でも高い。
さて小降りになったので出発!ジャルディーニは緑が多く(公園なので当り前ですが)運河もあるので、ピクニック気分で来てもいい場所です、晴れていればですけど。
雨の中ひたすら歩いてパビリオンを巡る。今回の総合ディレクターはナイジェリア出身のオクウィ・エンヴェゾー氏ですが、各国のパビリオンにはそれぞれコミッショナーがいて、国を代表して出品しています。それがヴェネチア・ビエンナーレが「美術のオリンピック」と言われるゆえん(オリンピックというよりは万博ですよね)。他の国際展よりもキュレーションの視点が多いので、作品がバラエティに富んでいて面白いのです。
そんな中でも日本館の塩田千春の作品「The Key in the Hand」は圧巻。日本、ドイツ、イタリアをはじめ世界各国から募集した18万個あまりの鍵を400kmの赤い糸で繋いだもの。ひとつひとつ人の手で繋いだそうです。人と人を繋ぐ赤い糸、過去の記憶をとどめる鍵、そして未来の扉を開ける鍵。中に入ると人々がみんな赤く染まってみえます。赤があまりにも鮮烈で、インスタレーションとしてとても美しい作品。これを見ただけでヴェネチアまで来た甲斐があったと思えます。たまたまかもしれませんが、滞在時間や記念写真を撮る人が一番多いパビリオンでした。ほんとに。
全パビリオンを周り、ジャルディーニ18時で終了。またまたどしゃ降りの中、ホテルまで歩くこと1時間。水上バス代7ユーロケチるんじゃなかった。旅行初日なのに膝がガクガクです。
(後編に続く)
ヴェネチア・ビエンナーレ公式サイト(伊・英)
http://www.labiennale.org/en/Home.html
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