柳澤健さんは『1976年のアントニオ猪木』でデビュー後、プロレスラーを題材に多くの作品を描いてきた。書名の「1974年のサマークリスマス」は林さんの番組が終了する直前の’74年8月にリスナー400人が代々木公園に集まったイベントにちなんだ。
「当日は嵐になって急遽TBSのスタジオに移動した参加者は共にびしょ濡れになったユーミンが歌う『ベルベット・イースター』や石川セリの『八月の濡れた砂』を聴くんです。’70年代の空気感を描くうえでいちばん印象的な出来事だなと思ってタイトルにしたんです」
柳澤さんは人物ノンフィクションを描く際、心に留めていることがあるという。
「師匠の橋本治(作家)に言われた言葉ですが、“書くことは愛することだから、書き終わったらその人を愛していなければ書いたことにならない”と思っています」