どう刺す、どう味わう? 伝統的な手仕事「カンタ」の基本を知る
撮影・徳永 彩 文・松本あかね
1. 弱った布の再生が起源。だから布は3枚重ねて
カンタに適しているのは柔らかい薄手の木綿の布。新しく用意するなら薄手のコットンカディを。約30cm四方にカットした布を3枚用意する。縫い縮みによるゆがみを補正するため、布目の方向を変えて重ねる。1枚目の布の上に2枚目を斜めに重ね、3枚目は布目の向きを1枚目と90度ずらして重ねる(写真左)。まち針で留め、斜めに置いた布のはみ出した三角の部分をカットする。カットした4つの三角形を1枚目と3枚目の四隅にそろえて挟み、しつけをかける(写真右)。
2. 初心者は円のモチーフから、外から内へ、ひと目ひと目
初めてカンタに挑戦するなら、刺し進めたときに布のゆがみが出にくく、いろいろな刺し方を練習できる円のモチーフから始めてみよう。準備した布に直径14cm程度の円を下書きする。並縫いでぐるりと1周したら、円の内側に針を出し、1段目と平行に同方向に向かって2段目を縫う(写真では針目を少しずつずらしながら斜めの紋様を描いている)。3段目以降も同様に中心に向かってぐるぐると刺していく。
3. 並縫いだけで無限の模様が生み出される
カンタは本来、弱った布の補強が目的。そのため複雑なステッチは用いず、シンプルな並縫いが基本。2のように1段目を1周刺してから2段目を刺す、これを繰り返しながら、1段目と2段目では針目をずらしたり、長さを変えたりしながら多様な柄を作り出す。シンプルなやり方で最大限のおもしろさを引き出すのがカンタの持ち味。玉留めをしないので布全体がしなやかに仕上がり、リバーシブルでも使える。
4. 動物、植物、山や川…モチーフは自由でいい
カンタの伝統的なモチーフは女性性を象徴する蓮の花、ペイズリー、聖なる動物とされる象や馬、そのほか身近な動植物、村の日常風景など。幾何学模様や規則的なモチーフを選んでもおもしろい。うまくいかなければやり直せばよく、並縫いだからほどくのも簡単。選ぶモチーフ、刺し方によって思いもかけない表現が生まれるのがカンタの魅力。まずは気楽に始めてみよう。写真は、右上から時計回りに、踊る人、象、ワニ、七面鳥!?
5. 縫うごとに生まれるシボ。その陰影こそが魅力
布を3枚以上重ねて刺すと、意図せず現れる自然な凹凸。真理さんがひと目でひかれたのは、このシボが生む陰影の美しさだった。刺し方によってさまざまな表情が生まれ、畝がくっきり浮き上がったり、渦を巻いたり、白子のようなひだになったり。また針目を密に重ねていくと、刺していない所にシボが白いライン状に浮き上がる。
6. 刺繡糸と刺繡針、布さえあれば場所を選ばずどこでもできる
刺繡糸はすべりすぎず、シボがきれいに出る越前屋の「マタルボン」がおすすめ。手に入らなければ刺繡糸の25番を。針はフランス刺繡針の7番。真理さんが愛用していたのは英国の老舗メーカー「ジョン・ジェームス」のもの。新しく布を用意する場合は薄手のコットンカディを。水通しをして糊を落としてから使うこと。コットンカディで感覚をつかんだら、家にある使い古した綿や麻の布に挑戦してほしい。
『クロワッサン』1176号より
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