大平一枝さんと上田淳子さんが語る、人工股関節手術のリアル
撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・枝村香織 イラストレーション・洞 智子 構成&文・中條裕子
私たち、共に決意して人工股関節の手術を受けました!
「一人で路頭に迷うのではなく、共に模索して進むことができた。」
右:上田淳子(うえだ・じゅんこ)さん 料理研究家。家庭料理から本格的な西洋料理まで幅広いジャンルに造詣が深い。著書に『フランス人が家庭で作る3種のソース。』『シンプル塩味のおいしいレシピ』など多数。
「手術で明確な改善を実感できる象徴的な病気かもしれない。」
左:大平一枝(おおだいら・かずえ)さん エッセイスト。市井の生活者を独自の目線で描く。近著『ある日、逗子へアジフライを食べに』ほか、『台所が教えてくれたこと ようやくわかった料理のいろは』など。
長い間、股関節の痛みを抱えてきた大平一枝さんと、上田淳子さん。友人でもある二人が同じ悩みに向き合っていることがわかり、人工股関節に置き換える手術を共に受けたのは、この対談の3週間前のこと。手術を決断するまでの経緯や術後の経過について、語ってくれました。
上田淳子さん(以下、上田) 同時に手術を受けて3週間経つけれど、私はまだ少し手術の修復過程である股関節にチリチリした感じは残っているかな。
大平一枝さん(以下、大平) 私は痛みというよりも、まだ少し他人の脚みたいに感じている。
上田 とにかく両脚に均等に力がかけられるようになって、腰痛が減ったのが何よりうれしい。
大平 それにしても、お互いに股関節にトラブルがあるとわかってからも、3年くらい手術に踏み切れなかったよね……。
上田 私は通っていた病院でもう手術したほうがいいかもねと言われたのが、スイッチだった。それまで、痛み止めの薬を飲む対症療法の生活が続いていたから。
大平 私も近くの整形外科でMRIを定期的に撮っていて、明らかに手術しないといけないというのがわかった。股関節の寛骨臼と骨頭がずれていくタイプで、隙間があくスピードが加速しているのを数年分の画像で見せられて。
上田 初めは通いやすい整形外科で定期的にMRIなどを撮りながら、手術などの着地点がいつなのかを医師と相談するのもいいと思う。
大平 私も1カ所の病院に通っていたから、進行の具合がわかった。
上田 現状がどうなのか、正しく把握することが大事かと。同じ股関節トラブルでも、私は軟骨のクッションがなくなっていくタイプ。あと数ミリで骨頭が寛骨臼を抉ることになり、もっと痛むようになると言われて手術を決意したので。
大平 それでも、なんとかして手術を避けられないか、いろいろと調べてみたよね。股関節の再生医療について、など。
上田 そう。膝関節は今、再生医療が進んでいると聞くし。
大平 再生医療について調べて、行った先の病院でカウンセリングしてくれたのが、今回執刀してくれた石倉久年先生。話を聞いて、総合病院よりも専門病院で専門医に託そうという決断になったけど、結局、それが正解だった。
上田 最初は、人工股関節にいろいろな術式があること自体知らなかった。大学病院に行った際に、うちは手前から切りますが、それをご了解の上で通いますか?と確認をされて気がついた。
大平 この術式ですが、うちを選びますか?という感じだよね。お尻から太ももの外側を切開して、股関節の後ろからアプローチする手術も一般的だから。
上田 病院や医師によっていろいろなやり方があるんだなと知って、その中で自分のライフスタイルに合う手術方法をと考えた。たとえば、大きな病院だと入院が2〜3週間、その後にリハビリが続く。となると、「仕事はどうなるんだろう?」と思ったからね。
大平 そこは大きかったよね。私たちが手術を受けた〈稲波脊椎・関節病院〉では、「ここはリハビリがスパルタですよ、その代わり1週間ほどで退院させます」と言われた。エイミスという股関節置換手術で、筋肉や腱を切り離さず行う、体への負担が少ない方法だった。
上田 脚のつけ根にある横シワの前を7〜10cmほど切るので、それほど手術跡も目立たない。
大平 私が先に「手術はこういうふうに決めてきた」と伝えたら、淳子さんも「私もその病院にしようかな」と。
上田 私が診察の際に最短の術日を聞いたら、大平さんと同じ日があった。その日を選んで心強かったのは確か。病院が苦手な人ほど、“病友”がいるほうがいいと思う。
大平 入院中は直接会えなかったから、今後どう生きていくかをスマホですごくやり取りしたね。
上田 直接会っていたら愚痴で終わっていただろうけど。会えないから最低限のラインでのやり取りになって、それがよかった。
大平 入院中はなるべくスマホをいじらず、本をたくさん読もうとお互い決めていたし。
上田 日々忙しさにかまけてズルズル生活するのではなく、時間を作ることは大切だとわかった。
大平 そして、股関節については、手術によって前に進むことができるのは間違いない。
上田 瞬間は痛いけれど、その後は骨折が治るより確実。手術する前とした後では明らかに違う。
大平 1日ずつ変わるからね。もう歩行器外せるんだ、杖だけでいいの? 次は杖も外していいんだ、とできることが増えていくので、改善を体感しやすい。
上田 長い目で見ると術前と術後の快適さは雲泥の差です。ちょっとデパートに買い物に行くのも、歩くのがつらいと「もういいか、通販で」となってた。楽しいことを痛みのせいで諦めていた。
大平 あのまま放っておいたら、諦めなくてはいけないことがもっと増えていたなと思うよね。
上田さんの入院生活
大平さんの入院生活
稲波(いななみ)脊椎・関節病院
住所:東京都品川区東品川3-17-5
TEL:03-3450-1773
※写真撮影・掲載については病院の許可を得ています
『クロワッサン』1175号より
広告