コンテナで始める、野菜やハーブなどを“食べられる庭”。育てる喜びでおいしさもひとしお。
撮影・三東サイ 文・辻さゆり
せっかく育てるなら、食べられるものを作りたい。
都心のマンションの最上階。太陽の光が降り注ぐベランダに足を踏み入れると、思わず「わーっ」と声があがった。約60平米のベランダには、150鉢以上の植物が伸び伸びと育っている。足元を見なければ、郊外の一軒家の庭と見紛うようなスペースだ。
「おしゃれな感じではなく、雑多で自然な感じの庭にしたいと、この部屋を借りた18年前から、夫と少しずつ植物を増やしてきました。私はせっかく育てるなら食べられるほうがいいと、ハーブや果樹を積極的に育てています」
葡萄棚には猿好きのこてらさんにちなんで「おさるのブドウ畑」という看板がつけられ、枇杷の木には「ひよどりさんもどうぞ召し上がれ」と書かれた札があるなど、遊び心もいっぱい。
「植物からはパワーをもらっていて、元気になります。だけど、虫はついてないかな、しおれていないかな、と気になってデスクワークがはかどらない(笑)。本当に魅力的なベランダです」
レモンは保存食にして一年を通して楽しむ。
ベランダにはレモンとオレンジを掛け合わせたマイヤーレモンと、しっかりとした酸味があるリスボンレモンが1鉢ずつあり、シーズンになるとたくさんの実をつける。
「農薬不使用なので、皮も入れた塩コンフィ(塩レモン)やマーマレード、レモンビネガーなどを作って保存しておきます。そうすると、一年中料理に使えます」
ハーブは摘みたてをたっぷりと!
ハーブは毎年いろいろな種類を育て、必要な時に必要な分だけ摘んで、自由に料理に使っている。
香りとともにほんのりと蜜が甘いローズマリーの花はサラダに、大量に収穫したバジルは炒めものに。
「バジルは摘みたてが一番香りがいい。少し葉が硬ければ、贅沢にわさっとフライパンに入れて炒めものにするのもおすすめです」
庭から台所へ、そして台所から庭へ。
「ハーブを買ったのに、使い切れずにだめにしたという話もよく聞きます。使う分だけを摘んで新鮮さを味わえるのも、〝食べられる庭〟の魅力」とこてらさん。
逆に、台所で余った葱やハーブを水に浸け、根が出たらコンテナに植えるという循環も。越冬の難しい品種もこれで株を増やしている。
『クロワッサン』1092号より