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親の介護のために仕事を辞めるべき?【介護の悩み相談室・離職編】

「離れていてもちゃんと介護できる?」「罪悪感を感じてしまう」……
ジャーナリストの太田差惠子さんが、別居介護にまつわる疑問と悩みに答えてくれました。

イラスト・古谷充子 文・天田 泉

Q.仕事を辞めて介護に専念しようか迷っています。

コロナ禍で長期間、親に会えなくなったので、仕事を辞めて地元に帰って親のめんどうをみる、という方の話はときどき耳に入ってきます。ただしその大半は、定年間近の方が退職を早めたようなケースです。

親はもちろん大切ですが、この先、介護は5年、10年、あるいはそれ以上続くかもしれません。人生100年時代と言われますが、自分自身の老後の経済状況についても、きちんと見据えておく必要があります。

また、介護は通常の場合、親の状態が好転することはほとんどないため、介護にあたる時間はどんどん増えていきます。すると、経済的にも、肉体的にも精神的にもより負担に感じるようになり、追いつめられてしまう人も少なくありません。いろいろな制度や介護サービスを活用しながら、今の仕事を続けられないか、もう一度考えてみましょう。

Q.地元に転職をして介護と両立を考えています。

介護に時間が取れるように、と仕事を辞めて転職した場合、年収が下がったり、正社員として働ける可能性がぐっと減ったりするなど、厳しい現実があることを知っておきましょう。

また、介護を終えてまた働きたいと思っても、元のような収入を得たり、やりがいのある仕事に就ける可能性は残念ながらまだまだ低いのが実情です。

さまざまな事情があると思いますが、冷静に判断することをおすすめします。

Q.将来、介護者になったら仕事を続けるか悩みます。

仕事を続けるかどうかを決める際に、ポイントがふたつあります。ひとつ目は現在の仕事を辞めても、この先食べていけるという経済的な見通しがあるのかどうか。もうひとつは、今の仕事にやりがいを感じているかどうかです。経済的に成り立たなかったり、仕事にやりがいを見出しているのなら、今の仕事を辞めないことが賢明だと思います。

私がよくお伝えするのは、まだ親が元気なうちに「介護がはじまっても仕事は絶対に辞めない」と決断しておくことです。そのときに親にも話しておけるといいですね。弱ってからでは切り出しにくいですから。そうすれば、いざというときにも思い悩むことはなくなりますし、介護についてソー
シャルワーカーやケアマネジャー、地域包括支援センターなどと方針を決めるのもスムーズです。

Q.戻るつもりがないことを親にどう伝えればいい?

先ほどは、介護が必要になる前に伝えるのが理想と言いましたが、すでに介護をしている場合も、きちんと言ったほうがいいと思います。自分の人生なのですから、親の望み通りにできない場合ははっきりと伝えましょう。

「ごめん、仕事は辞められないから戻れない」と伝えれば、親のほうも覚悟ができて、介護サービスや他人を頼ろうという気持ちへ向かってくれるかもしれません。

親の介護のために仕事を辞めるべき?【介護の悩み相談室・離職編】
  • 太田差惠子

    太田差惠子 さん (おおた・さえこ)

    介護・暮らしジャーナリスト

    1993年頃より老親介護の現場を取材。『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)など著書多数。

『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)

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