くらし

何もしない兄弟や親族との付き合い方は?【介護の悩み相談室・親族の問題編】

「離れていてもちゃんと介護できる?」「罪悪感を感じてしまう」……
ジャーナリストの太田差惠子さんが、別居介護にまつわる疑問と悩みに答えてくれました。
  • イラスト・古谷充子 文・天田 泉

【親族の問題】

Q.何もしないきょうだいに腹が立ちます。

きょうだいで問題が起こるケースはとても多いです。法律上は親に対する扶養義務は平等ですが、現実では「やる人」「やらない人」の構図ができて、「自分ばかり」と不満が募ります。「いっそ一人っ子のほうがよかった」という声もよく聞きます。

いくらきょうだいでも、別々に暮らすようになってから長い年月が経っており、家族構成や経済状況も異なります。そのうえ、親との歴史も親への思いも違うもの。「わかってくれる」という前提でものごとを進めると、無理が生じます。

まずは、きょうだい間でコミュニケーションをとることが必要になります。不満が爆発する前に、なるべく早めに話し合うようにしましょう。また、親のことで何か行動するときは、かならず事前にきょうだいに相談しておきます。知らせずにいると、頼りにされないと思われたり、何かあったときに責められたりする原因になるからです。

Q.親は、介護しない兄の意見ばかり聞くのがつらい。

男女のきょうだいの場合、今のところ女性が介護者になるケースが多いですね。親が、懸命に介護をしている娘をじゃけんにして、たまにしかやって来ない長男の言うことはよく聞く、という話も珍しくありません。それでも、兄が気の利く人だと、介護にかかるお金を出してくれたりするのですが、そうでない場合も多々ありますね。

最初は、むずかしいかもしれませんが視点を変えて、「介護はマネジメント」と捉えると、兄との関係も変わってくるかもしれません。親の介護をひとつのプロジェクトと捉えるのです。そうすれば、同じ方向を向いて介護にあたれるのではないでしょうか。

たとえばデイサービスをいやがる親に、兄からすすめてもらうのもひとつの手です。ほかにも親のかかりつけ医やケアマネジャーの窓口、介護にかかる予算などのお金の管理、契約書や同意書の捺印など、きょうだいそれぞれの得意なことで分担することを決めていきましょう。

Q.おばが口を出してきて煩わしく感じます。

親と同居しないことで、おじ、おばなどの田舎の親戚や近所の人から「親よりも仕事のほうが大事なの?」などと言われて、悩む人も多いですね。都会と田舎では、介護に対する考え方が違う場合も多いですし、世代によって価値観にズレが出てくるのは、仕方のないことかもしれません。

たとえ腹が立ったとしても、その場では「そうですね」「心配してくれて、ありがとうございます」と言って、さらりとかわしましょう。親の近くに暮らす人とは、できるだけ良好な関係性を保ちたいものです。

離れていると当然ながら、物理的に距離があるので、親に何かあったときにすぐに駆けつけることはできません。そんなとき近くにいる親戚や近所の人が頼りになります。できるだけ付き合いは残しておくと、いざというときに安心です。

太田差惠子

太田差惠子 さん (おおた・さえこ)

介護・暮らしジャーナリスト

1993年頃より老親介護の現場を取材。『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)など著書多数。

『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)

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