驚くほどの美肌の持ち主、芥川賞作家
本谷有希子さん。その秘訣は?
今年、第154回芥川賞を受賞し、作品はもちろんのこと、可憐な美しさでも注目を集めている本谷有希子さん。「特別なケアはしていない」というのが信じられないほど、透明感のある美肌が印象的。その美しさの秘訣を伺いました。
昨年の秋に、第一子の女の子を出産したばかりの作家、本谷有希子さん。当日、愛娘を連れて撮影場所に訪れた本谷さんの、やわらかな表情はすっかり母親の顔。
さらに、その澄み渡るような肌の透明感には、スタッフから驚きの声があがった。
「日焼けに気をつけるということ以外、特別なケアはしていないんです」 と少し戸惑ったように話す本谷さん
だが、その日焼け対策がすごい。引っ越しをしたら真っ先にUVカットの遮光フィルムを窓に貼る。執筆中で外出の予定がなくても毎朝日焼け止めを入念に塗り、旅行中や屋外に長時間いる日には、ほぼ3時間ごとに塗り直すという徹底ぶり。
「書斎の窓から入る紫外線も侮れないんですよ。家でも日焼け止めは必須。毎日使うので、軽いテクスチャーのものを選んでいます。基本的にメイクはしません。ファンデーションも持っていなくて、人に会うときは色付きの日焼け止めクリームを塗るだけです」
日焼けは肌によくないと教えてくれたのは、美容好きのお母さん。
「中学生の頃、日焼け止めクリームを塗らないと怒られました(笑)」というくらいだから、本谷さんの紫外線対策はもう長年の習慣になっている。生まれたときから色白なのを差し引いても、30代にしてシミひとつない美肌は母の教えを守ってきたおかげ。
「母はかなりの美容マニアですが、私はあまり美容に時間をかけません。出産してからはますますシンプルになっていって、これと決めたひとつのことを大事にするようになりました。それは仕事に対しても同じです」
結婚を機に、演劇の活動を少し休んで小説の執筆に集中することを決断。
芥川賞受賞作の『異類婚姻譚』は、結婚5年目の専業主婦が夫と同化していく自分に気づき始める不可思議な物語で、結婚というものの奇妙な、そしてややグロテスクな一側面を描いている。自身も、主人公と同じような感覚を抱いたことがあるのだろうか。
「自分がまったく思ってもいないことは書けないので、生活をしていて、日常と向き合ったときに感じたささいなことを拾い上げて小説にします。『異類婚姻譚』も、ある日、夫と顔が似てきているような気がした、という本当にちょっとしたことから小説世界が広がっていきました」
この作品が今までと違うとすれば、原稿用紙に手書きしたことが大きいかもしれない、と本谷さん。
以前は、執筆に入るときは頭を戦闘モードに切り替えてパソコンに向かい、寝食を忘れてストイックに取り組んでいた。
それが手書きにしてからは、寝転んだままふと思い浮かんだことを書き始めたりと、まるで逆のスタイルに。
執筆は生活の一部になり、あまり書けなかった日にも、生活の確かな手応えに支えられているから焦らずにいられた。
「体を使ってする行為を丁寧にしたいんです。原稿用紙に書く、ということもそのひとつ。本になれば同じ活字だけど、どう書いたかはすごく重要。もっと言えば、何を食べて、どんな服を着て、どう暮らしてという全てが作品に表れると思います。人の美しさも、普段の生活から生まれるんじゃないでしょうか。つまり、内面ですよね」
本谷さんが化粧をしないのも、作家として飾ることなく人前に立ちたいと思うようになったから。上辺だけきれいに見せようとすれば、作品の魅力まで損なわれてしまいそうな気がする。
「そうはいっても、やっぱり写真うつりがよくないと悲しくなるし(笑)、きれいに見せたいという欲はあるんですよ。素のままの自分でいるために、その欲望と闘っているところです。
◎本谷有希子 作家「劇団、本谷有希子」主宰/『異類婚姻譚』で第154回芥川賞を受賞。近著に『自分を好きになる方法『』嵐のピクニック』(共に講談社)など。
『クロワッサン』924号(2016年5月10日号)より
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