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古民家で保存食を手作りし、家族で台所に立つ暮らし。

自分らしく整った生き方をしている人たちは日々、どんな暮らし方をしているのか。薬膳料理家・山田奈美さんの日常をのぞいた。
  • 撮影・三東サイ 文・後藤真子

昔ながらの知恵を生かした暮らし

神奈川・葉山にある築90年の古民家で、薬膳料理家の山田奈美さんは、夫の泰宣さん、5歳の長男・大地くん、12歳の柴犬・ナナちゃんと、昔ながらの知恵を生かした暮らしを営んでいる。

広い庭にビワや松などの木々が茂る。周りは住宅地でバス停も近いのが信じられないほど静かな環境だ。

大事にしているのは、やはり食。四季折々の野菜や山野草をそのときに食べるだけでなく、保存食にして日々味わう。梅は梅酒や梅干し、シロップ漬けや梅味噌に。新しょうがの季節がきたらまとめて甘酢漬けにして、秋はきのこの醤油漬け、冬はもちろんたくあんや白菜の漬物を手作りする。縁側の軒先に、たくあん用の大根がずらりと下がる風景は、この家の風物詩だ。

台所の横の3畳間には、梅をさまざまに漬けた保存びんが並ぶ。
「梅干しは、たとえば夏場は子どもの水筒の水が悪くならないように入れるなど、いろいろな使い方をしています。黄梅を味噌と砂糖で漬けた梅味噌は、炒め物やそうめんのつゆに使います」と、奈美さん。初夏に大量の梅をさばく作業も、「梅の実にひたすら穴をあけていると、夢中になって気持ちがリセットされます。そういう時間が、心地よいのです」。

(左)種類豊富な梅の保存食。 (右)冷蔵庫には保存食がぎっしり詰まっている。

年に一度は味噌も仕込む。玄米麹と麦麹を使い、「本当は何年も熟成させたいのだけれど……」、たいていは1年寝かせ、翌年食べ切ってしまうとか。
「味噌造りは男の人の力があると助かるので、いつも夫に手伝ってもらいます。夫も、年に一度のイベントのように楽しんでくれています」

一日のメインイベントは、家族全員で作る夕食作り

(左)いつもは台所で乾杯してスタートし、夫婦で日本酒をちびちびやりながら夕食を作る。「食べるときに飲み始めると、子どもとペースが合わなくなるので」 (右)真剣な表情の大地くん。「全部(生で)食べられるものだから」と、軽く炒めて醤油で味つけ。

都会のマンション育ちという泰宣さんは、「もともと、こんなふうに自然に寄り添った暮らしを体験してみたかった」と満足そう。そんな山田さんの家の一日のメインイベントは、夕食作りだ。毎日の夕食を家族全員で一緒に台所に立って作るのが、一家のスタイル。

「息子の参加は、本人の気分にまかせています。自由に1品作ってもらうのですが、同じものを作ったことは一度もないよねぇ」と、奈美さんが笑いかけると、大地くんも照れ笑い。この日はいつもの夕食作りの様子を見せてもらった。近くに借りている畑で収穫したきゅうりやオクラを、危なげない手つきで切る大地くん、息子に目を配りながらも、胚芽米と湧き水を土鍋に入れてご飯を炊き、ぬか漬けを出す奈美さん、魚を焼き、炒め物を作る泰宣さん。会話が途切れることはなく、3人とも楽しそう。一家団らんが台所から始まっているという印象だ。

出来上がった料理は茶の間に運び、ちゃぶ台でいただく。縁側の向こうに見える庭の緑もごちそうだ。家族全員で、手間暇かけて「食」を楽しむ。その大切さと、豊かさを思わされた。

(左)一番上が大地くん作の一品。ほか鯖の塩麹焼き、ぬか漬け、ナスのごま味噌かけ、自家製甘酒を使ったかぶとしめじの甘酢和え、泰宣さん作の炒め物。 (右)毎日混ぜているというぬか床は17年もの。
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