2016年11月、安倍政権は公的年金制度改革関連法案を強行採決した。これは〝年金カット法案〞と言われ、今後は物価と賃金の、下落幅の大きいほうに合わせて年金は減額される。年金支給額は5・2%減少。国民年金は年間約4万円減。厚生年金は14.2万円減。「年金氷河期」がいよいよ本格化する。
森永卓郎(以下、森永) 日本の年金制度は、年々の歳入でまかなう賦課方式。少子高齢化によって、支える側が減って、もらう側が増えているわけだから、年金支給額が減るのは小学生でも理解できるしくみです。
荻原博子(以下、荻原) 今後は社会情勢に合わせて年金の給付水準を自動的に調整する〝マクロ経済スライド〟がスタンダードになっていくから、お年寄りの生活は苦しくなりますね。
森永 ますます厳しくなるでしょう。年金支給額は、65歳でもらう人と70歳でもらう人によって違いますけれど、このままいくと、ざっと3割から4割は減ることになる。
荻原 安倍政権は日本国民のほとんどを年金加入させようとしているじゃないですか。2016年10月からはパートタイマーでも年収106万円以上等の要件に当てはまると社会保険に加入しなくてはいけなくなりました。「106万円の壁」といわれているけれど、この壁はさらに低くしていく方針。厚生労働省は最終的に年金を支払う人が今よりも120万人増えると試算しています。このように支える人数は増えるけれど、それでも年金支給額は2割から3割は減りそうな流れです。
森永 僕はアベノミクスの影響で、日本は2017年にはデフレを脱却すると考えていました。でも、残念ながら、その予想ははずれそう。その理由はアメリカの大統領選でのドナルド・トランプの勝利です。「安倍首相は地獄の円安でアメリカが日本と競争できないようにした」「キャタピラーがコマツよりも売れないのは円安誘導のせいだ」……といったトランプ氏の発言から察するに、彼は日本の金融緩和政策を認めません。金融緩和で日本の資金供給が拡大すると、為替は円安に向かって、アメリカの企業は日本企業に対して不利だからです。日銀はアメリカに追加の金融緩和を封じられ、アベノミクスは終焉を迎えるでしょう。