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【後編】荻原博子さん☓森永卓郎さん伝授。年金13万円時代の乗り越え方。

老後破産なんて無縁です! 森永卓郎さんと荻原博子さん自身が実践する、生活コストを下げて楽しく生活する知恵を紹介します。
  • 撮影・岩本慶三 文・神舘和典

クルマは軽自動車に、保険は共済に切り替える。

森永卓郎さん(以下、森永) 会社員の家庭だったら生活費をやりくりして、定年までに住宅ローンは返済しておきたいですね。

荻原博子さん(以下、萩原) 13万円の年金収入の中から、住宅ローンは払えませんから。安定収入があるうちに、借り換えと繰り上げ返済をどんどんやりましょう。繰り上げ返済で金利分を減らすのは、どんな金融商品を買うよりも確実で効率的です。

森永 住宅については、都心部で暮らす荻原さんと僕は意見が違うんですよ。定年後は僕の住む、都心部から50キロくらい離れた郊外の町へ引っ越せば、中古の戸建てが1500万円で買えます。駅からバスに乗るのが苦でなければ、戸建ても500万〜1000万円です。もし都心部にマンションを持っているならば、それをバン!と売って買い替えればローンも完済できるし、生活はすごく楽になるはず。

荻原 あるいは、生まれた町へ帰るとか。今、地方は若い世代の人口が減っていて、仕事が増えているし。

森永 いやいや、荻原さん、そんな遠くじゃなくても、埼玉の我が家のほうでも物流センターとかショッピングモールで雇用はあります。しかも、電賃300円台で都心へ出られる。

荻原 そのあたりはライフスタイルの志向によりますけれど(笑)。ライフスタイルといえば、森永さん、自家用車は運転しているの?

森永 軽自動車に乗っています。自家用車の場合、総排気量2リットルの普通車の税金は3万9500円。でも、軽ならば1万800円。しかも、2015年4月より前に新車登録された軽は7200円です。さらに、高速代も安い。ほとんどの有料道路は、オートバイと同じ料金です。

荻原 都心部で暮らしているならば、自動車は持たなくてもいいですよね。あるいは、カーシェアリングを利用するとか。私は事務所へは自転車で通勤しています。ただ、何かの時のために一応クルマは1台あります。私もやっぱり軽です。燃費は抜群。1リットルで30キロくらい走ります。

森永 僕の軽はおとなしく走ればリッター20キロ以上。でも、楽しくてつい、ゴーカートの気分でブイブイ吹かしてしまうんですよね……。だから12〜13キロくらいしか走りません(笑)。それでも軽は税金も保険も維持費が安い。

荻原 自動車保険はもちろん、生命保険も、月払いではなく、一括に切り替えることをお勧めします。それだけで2〜4%は安くなるから。会社員の家庭ならボーナスの月に全部払ってしまうといいですよ。さらに、まだ余裕があるならば、毎月保険料を支払っているつもりで、月2万円でも積み立てをしてはいかがでしょう。

森永 生命保険って、年齢とともに必要性が低くなるでしょ。子どもが自立したらその時点で、解約ではなく、払い済みにしてしまうのも一案です。支払われる保険金が低くなる代わりに、保険料の支払いもなくなる。特約が消滅するなど、商品によって損得が違うので、契約している保険会社に確認してみては。僕自身は、300万円の終身保険に加入しています。自分の葬式代がまかなえる額です。

荻原 思い切ってやめちゃってもいいと思いますよ。だって、生命保険って子どもが自立したらいらないはず。自分たちが死んだら、家とか遺族年金とか、ほかにも残せるものはあるでしょうから。さもなければ、お守りのつもりで共済保険を検討してみては。営利目的の生命保険は、年齢や性別によって掛け金が細分化されていますよね。一方、基本的に営利を目的とせずに、〝共に助け合う〟共済は概して掛け金が安くて、たとえば20〜60歳……というように世代をざっくりと括る年齢群団方式がスタンダードです。だから、年齢が高いほどお得。コープ共済、都民共済、県民共済など、共済にもさまざまあるので、どれが有利か比較検討してみてはどうでしょうか。

森永 固定費では、荻原さんは光熱費や通信費はどうしていますか?

荻原 光熱費については、電力が自由化されたので、新しい会社に切り替えました。前より、少し安くなったかな。

森永 設備も変えたのですか?

荻原 いえ、うちは光熱費がそれほどかかっていないので設備まで変える必要はなかったの。

森永 うちは窓全面にエアパッキンを張っているんですよ。断熱・保温効果は抜群です。きれいに貼れば、窓の開閉にはまったく問題ありません。ただし、外の景色は見えなくなりますけれど(笑)。

荻原 通信費は、今、どの家庭でも家計を圧迫していますね。

森永 僕は月額1250円の楽天モバイルですけれど、通話とメールだけならば、まったく不便を感じていません。

荻原 そうそう。格安スマホに切り替えるだけで、通信費は½から⅓になるんですよね。家族4人分だと考えたら、大きな節約になるはず。

森永 ただし僕の場合は一番安いプランなので、動画は見られません。まあ、そもそも見ないですけれどね。

荻原 ガラケーもプランを変更すると、一気に安くなることもあります。変更を面倒に感じることなかれ。サービスセンターに電話をするだけです。電話番号と用途を伝えれば、自分に合うプランをアドバイスしてくれます。オペレーターが提示する中から選択すれば、翌月から月額1000円、2000円、ポン!と安くなることもある。一年の中でも、季節や職場の配属によって、利用頻度も変わるでしょうから、2、3カ月に一度、プランを見直せば家計が助かります。

「年をとっても、人との つながりは大事にしたい。 交際費は一番多くしたいですね」と萩原さん。「そうですね。自分の趣味・娯楽も 大切にして。健康であることは 大前提。だから医療費はゼロ!」と森永さん。

がむしゃらにお金を貯めるより、 無駄を省いていきましょう。

森永 先ほどもお話ししましたが、定年退職時までに1億円貯めるよりも、無駄な支出を省いていく術を身に付けるほうが僕は大切だと思います。もし優良企業で働いていて退職金が1500万〜2000万円もらえるならば、年金支給額が下がっても、借金さえなければ充分に楽しく生活できるんじゃないかなあ。

荻原 私は最低1500万円は貯めたほうがいいと思います。というのも、生活保険文化センターの「平成28年度生活保障に関する調査」によると、一人平均500万円介護にかかっているんですよ。すると、二人で1000万円でしょ。その上で年金をもらう。支給額は減っても、なくなりはしないので、二人で20万円もらえればやっていけるかな。歳をとると病院代はかかるでしょうけど。医療費が高額になったときには国が助けてくれる高額療養費制度を活用すればいい。

森永 健康でいることはすごく大切です。僕はついこの前まで、糖尿病の治療をはじめ、医療費が大変でした。毎朝お腹に2本インスリンの注射を打って、薬も、人が見たらびっくりするほどの量を飲んでいた。毎月、検査費が2000円、治療費が1万2000円です。その負担が、ダイエットで20キロ以上落としたことでゼロになりました。病気でないということはものすごい節約だと身に染みた。

荻原 健康になってよかったですね!

森永 ありがとうございます。担当医によると、太ったままだったら、僕、死ぬところだったそうです。やせてね、被服費も⅓になりました。以前は店にはめったに置いていない肥満体用のビッグサイズで、もちろん定価購入。でも、今はセールで買えます。おおげさではなく、人生が変わりました。

荻原 無駄を一つ一つ省いていくと、生活のコストは抑えられます。だから下手に投資でお金を増やそうなんて考えないこと。投資は、あくまでもギャンブルです。失っても生活に影響しないお金のあるときしか手を出してはだめ。株式は資金のある人だけが有利なシステムです。100万円の資金全額を投じて50万円損したらマイナスのまま。でも、1000万円の資金で100万円投じて50万円損しても、その下がった株を買って取り戻せますからね。

森永 投資をする人を止めはしませんけれど、お金がお金を生むなんて幻想を持ってはいけない。

荻原 そう。だから、借金の埋め合わせのための投資なんて絶対だめです。

森永 荻原さんも僕も年金13万円で暮らす内訳をつくってみたけれど、少ないお金の中で娯楽費、交際費はしっかり確保していますね(上記参照)。

荻原 だって、人生、ワイワイ楽しく生きていきたいじゃない。

森永 ええ、人間、結局は〝人とのつながり〟が一番の財産だと思いますよ。

『クロワッサン』942号より

●森永卓郎さん 経済評論家/獨協大学教授。最新刊は『老後破産しないために、年金13万円時代でも暮らせるメタボ家計ダイエット』(扶桑社新書)。

●荻原博子さん 経済ジャーナリスト/生活者の目線で経済を語る。そのわかりやすいコメントが好評。最新刊は『生き返るマンション、死ぬマンション』(文春新書)。

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