元気に長生きしてほしいから。
猫の老化のサインを見逃さない方法。
できるだけ元気で長生きしてほしいのは猫を愛する人の切実な願い。知っておきたい老化現象、そして病気のことを猫専門病院「東京猫医療センター」院長の服部幸さんに聞きました。
「猫の寿命が延びた背景には、動物医療の発達やペットフードの普及、そして何より、飼い主さんの猫に対する姿勢の変化や意識の向上が大きな要因」
そう話すのは「猫の健康と幸せを第一に考える」猫専門病院「東京猫医療センター」院長の服部幸さん。
考えてみれば、猫の食事はご飯に味噌汁をかけた「ねこまんま」から、猫の体のことを考えて作られた「キャットフード」へ。また「猫は病気になったら姿を消す動物」から、「具合が悪そうなら動物病院に連れていく」のが当たり前になっています。
とはいえ、猫も確実に年をとります。しかも人間よりずっと早く。
「猫は人間より5倍ほど早く一生を終える生き物です。飼い始めは小さな子猫でも、いつの間にか飼い主の年齢を超えていく。そのことを忘れてはいけません」
猫は生まれて約18カ月で、人間の年齢に換算すると20歳に達し、2歳で24歳。それ以降は猫の1年は人間の4年分に相当するとか。
今現在、家猫の平均寿命はおよそ15歳。その8割を過ぎた12歳くらいからが「老化」の始まりです。
いつもと何かが違う。
小さな違和感を見逃さない。
「加齢によって見た目が変わる人間とは違い、猫は外見があまり変わりませんよね。そのため飼い主は愛猫が年をとったということに意外と気がつかないんです。でも老化しはじめた猫は、それまでと同じように生活できなくなってくるし、なにかと負担も増えてくる。まずは日々よく観察して、老化のサインを見逃さないことが大切です」
たとえば目やにが多くなる、口臭がきつくなるといった体の変化はもちろん、お気に入りの高い場所に上れなくなった、いつもは目をキラキラさせて反応していたねこじゃらしに興味を示さないなど、行動にちょっとした違和感を覚えたら老化を疑ってみてください。
そして猫の老化を感じたら「あらためて住環境や食事などを見直すことが大事」と服部さん。
「高い場所に上れない場合は、足場となる踏み台を増やしてあげたり、低い場所に新たな寝場所を作ってあげるなどの工夫が必要になってきます。重要なのは、いかに猫のストレスを減ら心地よい生活を送らせてあげるのか。それが健康で長生きしてもらうための秘訣です」
また老化を疑うときに、気をつけたい問題がある。猫の変化すべてを「もう年だから」と決めつけないこと。
「猫の12歳は人間でいえば64歳です。人間が病気になりやすい年代であるように、猫にもさまざまな病気や不調が起こりやすくなります」
多く見られるのは腎臓病、リンパ腫や乳がんなどの悪性腫瘍、糖尿病。また甲状腺機能亢進症にもなりやすいですが、この病気の場合、食欲は旺盛で元気もそのまま。まさか病気だとは思わない飼い主が多いのが現状です。
「しかも、もともとは野生動物だった猫は、外敵から身を守るため弱みを見せず、具合が悪いことを隠す習性がありますから、気がついたときには病気がすでに重症化なんてことも」
そこで、覚えておいてほしいのは、
1.飲む水の量が増える。
2.ダイエットをしているわけでもないのに体重が減る。
3.お腹がふくれている。
という3つの変化。
「これらが生じたときには、様子を見守るのではなく、すぐに病院に行くことです。人間にはちょっとした変化だとしても、猫にとっては大きな問題となる可能性があります」
愛猫にはただ長生きしてほしいのではなく元気な状態でいてほしい。
だからこそ、できることを精いっぱいしてあげましょう。
◎服部幸さん 猫専門医。『ネコにウケる飼い方』『ネコの本音の話をしよう』(共にワニブックス)など著書多数。愛猫はナイトくんとクイーンちゃん。
『クロワッサン』916号(2016年1月10日号)より
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