ストレス対策のプロが伝授する、心身疲労軽減の極意。
イラストレーション・山口正児 文・板倉みきこ
40〜50代にのしかかるのは、自立しきれていない子ども、パートナーや夫との関係、親の介護問題、先行きへの不安と多岐にわたる。さらに職場や近所の人間関係の悩みも尽きず、全方位にストレスの種があるようなもの。
「個人差はありますが、気力、体力が落ち、ストレス耐性が衰える年代でしょう」(公認心理師・小高千枝さん)
蓄積したストレスは心の不調だけでなく、重症化すると体の不調も引き起こすので、いかに負荷を減らすかが重要。そこで今回は、ストレスの原因を環境、自分、人間関係の3つに分類し、生じやすいストレスに対する具体的な解決法を識者に提案してもらった。
「世間の常識、自分の思い込みなどで間違った対応をし、ストレスをさらに悪化させている人も多いんです。大事なのは、まず疲労している状態に気づくこと」(医学博士・横倉恒雄さん)
「恨みや怒りなどを溜め込まず、小さな不満のうちに解消できる方法を身につけていきましょう」(アサーティブジャパン代表・森田汐生さん)
「心身が発する声に気づき、早めに対応を」
横倉恒雄(よこくら・つねお)さん
医学博士。「横倉クリニック」院長。女性の内分泌学と心身症が専門。健康外来も併設。長年、病気が治る「脳」の健康法を提唱し続けている。
「ストレスを感じると脳は戦闘態勢に入り、自律神経の交感神経が優位になります。すると防御反応として心身をリラックスさせる副交感神経のスイッチが入るのです。ストレス過剰が続くと交感神経の緊張状態が続くので、脳が疲弊して体調不良を招きます。イライラしたりやる気が出なくなるのは、ストレスに対抗している体の自然な反応。早めに疲労に気づき、本能が求める行動を取りましょう」
\軽減させる ポイント!/
本能が求める行動とは、食事や睡眠など。また、物を選ぶのは好きか嫌いかを基準にする。すぐカッとなる、やる気が出ないと思ったら、考えることをやめ、自分を甘やかして。
「自分のストレスパターンを分析しましょう」
小高千枝(おだか・ちえ)さん
公認心理師。メンタルトレーナー、コーチ。心の免疫力を高めるためのセッションを提供。近年はがん患者のメンタルケアにも従事し、後進の育成にも励む。
「心身への負荷にマイナスな感情を抱くのは普通のこと。ただ、なぜこんなに嫌な気分になるのか、客観視してみましょう。将来への不安、自分自身への不満、人間関係の悩み……。人によって負担に感じやすい刺激は異なります。そのパターンが分かれば、自分らしく生きていくきっかけになることも。また、ストレスに対応するには経験も必要。対応を繰り返すことで、徐々に耐性がついていきます」
\軽減させる ポイント!/
マイナスな状態に陥る自己パターンが分かると、対処法も導きやすくなる。でも、最初は嫌なことや苦手なことから逃げない。向き合い、経験を積むことでストレス耐性が育つ。
「ストレスの最大原因、人間関係にフォーカス」
森田汐生(もりた・しおむ)さん
アサーティブジャパン代表。社会福祉士の資格を有し、英国の精神医療団体でソーシャルワーカーとして勤務した経験も。全国各地で多数の講演・研修を行っている。
「人間関係はどうしてもストレスを生みます。“アサーティブ”とは、自分の気持ちを大切にし、相手の考えも尊重しながらより良い関係を築くために、自分が考えること、感じること、希望していることを表現する手法です。複雑で面倒くさい人間関係ですが、より良い関係を築くことで大きな幸せを感じるのが私たち。今までの接し方や伝え方を変える工夫をするだけで、だいぶストレスは減るものです」
\軽減させる ポイント!/
大事なのは、言葉に出す前の自分のありよう。自分の気持ちに正直に向き合い、相手の考えや立場も心から考える謙虚な姿勢を持つこと。「人間関係の改善」を一番の目的にして。
『クロワッサン』1020号より