くらし

ツレヅレハナコさんの東京の味。江戸前の職人技術を感じる、上戸も満足な寿司の名店。

ありとあらゆるおいしいものと洗練されたものがひしめき合い、ただ歩くだけでも刺激的な街、それが東京。恩恵を受けられるのはなにも住人だけに限りません。仕事や観光で訪れたつかの間にも街の力がフルチャージされるはず。食通が考える、今の東京を体現するお店を知り、店選びの基準を学んでみましょう。
  • 撮影・青木和義、黒川ひろみ

東京は、「世界で一番おいしい街」だと思います。

35以上の国で食事をしましたが、これほど多様性に富んだ食事をしている都市はほかにないのでは。世界中の食を受け入れ(ほぼ自国の料理しか食べない国も多いですよね)、大衆店には大衆店の良さがあり、高級店には惜しみない欲望が詰め込まれる。「老舗の味」を守る意識が高い一方、「食の新解釈」もウェルカムで競争も激しいから、コストパフォーマンスのバランスも絶妙。もちろんニューヨークやパリも食の街ですが、東京は日本人らしい繊細さと貪欲さで層の厚みを作っているように思います。

寿司でいうなら、谷中の『すし 乃池』が私の定番。一見すると小さな町のお寿司屋さんですが、そのためだけに行きたくなるキラーメニュー〈穴子寿司〉の名店です。15年ほど前、日曜の昼間に千駄木を散歩していて、「おいしい穴子寿司の店が近くにある」と連れてきてもらったのが最初。下町で創業して半世紀、東京湾の穴子しか使わず、もちろんガチの江戸前寿司の職人仕事! ツメ(タレ)も気が遠くなるほどつぎ足されているんだろうなあ……。折詰に穴子寿司がギュッと詰まった感じや懸け紙、簡素なのに骨太な店構えも大好きです。

新定番として挙げたいのは、西荻窪の『鮨 まるふく』の熟成鮨。本来、江戸前は「冷蔵庫がなかった時代の保存技術」が必要な職人仕事ですが、それを発展させたのが熟成鮨。新鮮なだけでは生まれない、上手に寝かせることでのおいしさを堪能できます。

まず、単なる保存技術を“美食”まで突き詰める、「熟成鮨」というジャンル自体が今の東京っぽい。そして、この内容でこの値段!! と毎回、お会計の時に衝撃が走ります……。山の手で同じレベルのものを食べたら倍以上はするのでは。中央線の西荻窪駅という落ち着いた客層が多い住宅街だからこそ、それに合わせての価格設定なのかな〜。行くたびに旬を感じさせてくれるので、季節を通して通い続けたいお店です。

【西荻窪】鮨 まるふく

『鮨 まるふく』の熟成鮨。濃厚な旨味のネタと、赤酢のシャリが調和した、至福の味わい。鰯(熟成20日)。
赤身(熟成10日)。
鰤(熟成22日)。
海老(熟成3日)。自家製海老醤油、海老味噌、海老塩で調味された、『まるふく』のスペシャリテのひとつ。
こちらもスペシャリテの逸品、烏賊(熟成20日)。大きめのアオリイカを使うため、長期でじっくり熟成させる。
小肌(熟成14日)。
『鮨 まるふく』の熟成鮨。濃厚な旨味のネタと、赤酢のシャリが調和した、至福の味わい。鰯(熟成20日)。
赤身(熟成10日)。
鰤(熟成22日)。
海老(熟成3日)。自家製海老醤油、海老味噌、海老塩で調味された、『まるふく』のスペシャリテのひとつ。
こちらもスペシャリテの逸品、烏賊(熟成20日)。大きめのアオリイカを使うため、長期でじっくり熟成させる。
小肌(熟成14日)。
「熟成寿司ブームと言われる時代ですがこちらの大将はいつも軽やか。仕事の技術はものすごいのに、肩の力を抜いて食べられるよう雰囲気を作ってくれるところがツボ」とハナコさん。
品書きは〈おまかせコース〉1万4000円(税込)のみ。熟成魚の刺身やつまみが熟成鮨12〜13貫と交互に出てくる。
唎酒師でもある女将が選ぶ日本酒は全国の銘酒が揃う。
「熟成寿司ブームと言われる時代ですがこちらの大将はいつも軽やか。仕事の技術はものすごいのに、肩の力を抜いて食べられるよう雰囲気を作ってくれるところがツボ」とハナコさん。
品書きは〈おまかせコース〉1万4000円(税込)のみ。熟成魚の刺身やつまみが熟成鮨12〜13貫と交互に出てくる。
唎酒師でもある女将が選ぶ日本酒は全国の銘酒が揃う。

熟成魚をとことん味わい尽くす、高注目度の最旬寿司店。

ネタは新鮮なほうが良いという先入観を打ち砕く熟成鮨。熟成の加減は仕入れの時に見極める。

「人間と一緒で、脂ノリのいいやつもいれば、そうでないのもいるからね」と笑う大将の伊佐山豊さんの人柄に惹かれる客も多い。ハナコさんも「カウンターに座るだけでリラックスできる大好きなお店。料理もいずれもが絶品でお酒も好みだし、春夏秋冬通いたい」と絶賛。

すし まるふく●東京都杉並区西荻南3-17-4 TEL:03-3334-6029 営業時間:18時〜21時30分最終入店 日曜休

【谷中】すし 乃池

〈名代 穴子寿司〉2,500円(税込)。これぞ江戸前の穴子寿司というべき逸品。「関西では焼いて押し寿司にすることが多いですが、煮た穴子を握りにしていただくのが、東京ならではの食べ方ですね」と主人の野池幸三さん。
昭和40年の創業以来、地元の住民や近くの寺への参拝客に長く愛されてきた。
最近では若いグループや海外からのお客も多く訪れ、趣ある内外観は下町の新たなフォトスポットに。
〈折詰 穴子寿司〉2、500円(税込)。お土産に最適な折詰。ツメはうっすら塗られているので、食べる直前に別添えのツメをさらにかけて。
〈名代 穴子寿司〉2,500円(税込)。これぞ江戸前の穴子寿司というべき逸品。「関西では焼いて押し寿司にすることが多いですが、煮た穴子を握りにしていただくのが、東京ならではの食べ方ですね」と主人の野池幸三さん。
昭和40年の創業以来、地元の住民や近くの寺への参拝客に長く愛されてきた。
最近では若いグループや海外からのお客も多く訪れ、趣ある内外観は下町の新たなフォトスポットに。
〈折詰 穴子寿司〉2、500円(税込)。お土産に最適な折詰。ツメはうっすら塗られているので、食べる直前に別添えのツメをさらにかけて。

下町散策からの昼酒の〆にも。江戸前を象徴する穴子の握り。

「普通の寿司も一通りあるけれど、私は必ず穴子だけの握り8貫一択で!」とハナコさんが力説する谷中名物。軟らかく煮た穴子と濃いめのツメが口の中でとろける。

「下町散歩からのカウンターで、タコの煮物や穴子の肝、白和えなどのつまみで昼酒をして、〆に穴子寿司を食べる楽しさにハマりました。折詰を差し上げると、いろいろな人にとても喜ばれます」

すし のいけ●東京都台東区谷中3-2-3 TEL:03-3821-3922 営業時間:11時30分〜14時、16時30分〜22時、日曜・祝日11時30分〜20時(各30分前LO) 水曜休

ツレヅレハナコ●編集者。『ツレヅレハナコの揚げもの天国』(PHP研究所)、『ツレヅレハナコの食いしん坊な台所』(洋泉社)など、食に関する著書多数。

『クロワッサン』995号より

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