くらし

噺家の衣装、 着物について解説。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

お仕事でさまざまな場所へうかがいます。諸般の事情で会場入りが開演間近なんてことが――ないに越したことはありませんが――たまにあります。たいてい洋服姿で楽屋入りしますから、主催者さんが心配そうに「間に合いますか? 着物にお着替え、何分くらい必要ですか」なんてお尋ねのとき「急げば3分、まあ5分あれば確実に大丈夫です」なんて言うと「そう……え!?」と、かなりの確率でびっくりされます。着物の着付けなんていうと成人式の女性が夜明け前から……なんてイメージがあるのかもしれません。

男の着物はご婦人にくらべて圧倒的に手間がかかりません。一般的な噺家の着付けは、肌襦袢、ステテコ、足袋という下着類をまず着てから、長襦袢を着て下締めで締める。着物を着て角帯を締め、貝の口という結び方。羽織を着る。……以上。あとは姿見(鏡)で細かなチェック(襟元や帯の位置、くらいです)をすれば万端です。

角帯は細め……つまり幅の狭いものが好まれます。お腹の丸みを下から支えるようなイメージで、低い位置に締めます。幅の広い帯を胸高に――夏場に浴衣の若い男性がよくそんな着方をしてますなぁ――締めていたりすると「バカボンみたいだねぇ」なんて笑われます。着物の丈も好みで差はありますが、一般のかたがたより長めです。まずくるぶしは確実に隠れるように。そして一番の決まりは、前座修業の期間中は羽織、紋付、袴を着ることは禁じられています。二ツ目昇進で晴れて許されたその時は、まさに“噺家日和”のスタートです。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』989号より

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