方向とバネの強さを調節し、卵を飛ばして巣に入れるゲーム。
これは難しいです。正直言って初心者にはあまりお勧めしません。ここで言う初心者とは物理学の心得のない方、つまり私のような人です。
以前紹介したHappy Glassもそうだが、こういう“運動系”のゲームって、最後は物理学の問題という気がする。
それと、1問目をクリアすると2問目に進む方式なので、一回ごとにご破算になってしまって、何というか達成感が薄い。
どうぶつタワーは動物をてんこ盛りにしてゆく快感があったし、Dai Pyooonはゲームの始めに最高達成回数を表示してプライドをくすぐってくれた。しかしEGG in ONEは、何故か喪失感ばかりが募る。
一つには、失敗するとタマゴがぐしゃっとつぶれてしまうからだろう。卵は経済の優等生で、五十年前とあまり値段が変っていない。そんな健気な食品に“グシャ!”なんて、あんまりじゃありませんか。
それに、私は卵が大好きだ。子供の頃は“卵の好きなエコちゃん”と呼ばれたほどだ。卵をつぶすな!
と言いつつ、ゲームを続けているうちに気が付いた。これは筋トレに例えると腕立て伏せではないか。
スクワットやデッドリフトは大きなバーベルを持ち上げるので、達成感が大きい。しかし腕立て伏せは動かす筋肉が小さくて地味だ。にもかかわらずキツい。理不尽だ。
このゲームも腕立て伏せも、達成感を得るまで道は遠いらしい。
山口恵以子（やまぐち・えいこ）●作家。最新刊『ふたりの花見弁当 食堂のおばちゃん4』（ハルキ文庫）。
『クロワッサン』987号より
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