大和 振り返ると、私は、28〜29歳でこの連載を始めて、終了まで足かけ14年かかりました。描く前によく、原文を声に出して読む作業をしたのですが、朗読すると本当にその映像が浮かんできます。源氏物語にはその世界に人を引きずり込んでしまう魔力がある。ほかの仕事をはさみ、頭を冷やしながらやったのが、案外良かったように思います。
林 私も謹訳に取り掛かってから、東日本大震災が起き、父や妹など自分の家族も病気で失いました。私自身も喘息が悪化し、この仕事を終えるまで生きているだろうかと思うくらいでした。それくらい命を削る仕事でしたね。やり遂げられて良かったです。
大和 1000年生きているだけのことはある、力強い作品です。物語そのものに“命”がありますよね。