たとえば、お気に入りの男たちや揺れる女心といった男女の機微について、また、舌打ちしたくなるものやガッカリなものといった「ああ、そうだよねえ」と共感できる事柄について、原文とそれを伝える生き生きとした現代語訳と合わせ、縦横無尽に語られているのである。これが、おもしろくないわけがないのだ。
「こういう男はいい男、こういう男は悪い男、なんて話もあったり。つまり、これは当時の宮廷あるある話なんですね。それは、実は現代でもあるあるだな、と。そういう話の集大成が枕草子なのだから、もっと広く読まれてもいいのではないかと思うんだけどね」
今の私たちが読んでも膝を打って共感できるようなエピソードが満載なのに、なかなか教科書では取り上げられないのが残念だという。実際に林さんが選んで訳した文章を読むと、清少納言の意外にもかわいらしい一面を垣間見ることができる。