旅に出て、無駄足や空振りを繰り返した挙句、ついに土地の駄菓子を見つける。明治時代の駄菓子は消滅寸前だったりする。幸作さんは「やったー! 間に合った」と興奮しただろうなぁ。
駄菓子を描いた絵はすみずみまで克明で、彩色も鮮やか。幸作さんの駄菓子愛がじーんと伝わってくる。そして、保存の利かない駄菓子を粘土細工にして残そうという発想がすばらしいなぁ。展示された駄菓子の模型を見ているお客さんは、みんなニコニコしていた。
友人に、壁の落書きをコレクションしている変わり者がいる。特にサッカー関連の落書きを収集するのが好きで、ヨーロッパや南米のサッカー場のまわりをウロウロ歩いて「見つけた!」「わざわざ行ったのに収穫ゼロ」などと一喜一憂している。芸術家の作品ではないところが味わい深いという。翌年同じ場所を訪ねたら消えていたりする、その儚さがたまらないともいう。
さて今回は、石橋幸作さんの駄菓子コレクションの展覧会。幸作さんは仙台の飴屋さんだった。1930年頃から駄菓子にハマった。全国各地を訪ね歩き、その地に根付いた駄菓子を絵に描き、粘土細工で再現し、記録し続けたのである。「名もなき職人の手によるもの」で「いつ消えちゃうかわからない」ところは、落書き収集に通じるものがある。
なによりも「実際に現地に行ってみないと、あるかないかわからない」のが醍醐味だ。これ、情報網が発達している現代ではなかなか経験できないことだ。
旅に出て、無駄足や空振りを繰り返した挙句、ついに土地の駄菓子を見つける。明治時代の駄菓子は消滅寸前だったりする。幸作さんは「やったー! 間に合った」と興奮しただろうなぁ。
駄菓子を描いた絵はすみずみまで克明で、彩色も鮮やか。幸作さんの駄菓子愛がじーんと伝わってくる。そして、保存の利かない駄菓子を粘土細工にして残そうという発想がすばらしいなぁ。展示された駄菓子の模型を見ているお客さんは、みんなニコニコしていた。
金井真紀(かない・まき)●作家、イラストレーター。最新刊『パリのすてきなおじさん』(柏書房)が発売中。
『クロワッサン』978号より
※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。