〈新田恵利の看取りの話 Vol.7〉いくつになってもオシャレに全力だった、母との思い出
文・新田恵利 編集・クロワッサン編集部
食欲の秋・収穫の秋・読書の秋・芸術の秋・スポーツの秋・ファッションの秋、色々な秋があるけれど、みなさんはどんな秋を楽しみますか? 私は食欲、一択です! でも、亡き母は違っていました。
季節が変わるごとに新しい服を欲しがり、2人でお出かけするのが恒例。高価な服ではないけれど、好きな色で気に入った物を手に入れると、母はとても喜びいつ着て行こうかとワクワクして、その姿は少女のようでした。母が寝たきりになると、季節ごとに私が買うようになりました。気に入ると「あらぁ、素敵」とか「良い色ね」と何度となく体に当てたり、眺めたりと素直に喜びます。まずないのですが、気に入らないと「ありがとう」の一言で片付けます。分かりやすい人でした。母のお出かけの予定がある前日には、2人であーだこーだとクローゼットをひっくり返して納得いくコーディネートを用意。寝たきりになってからも、デイサービスに行く服を「恵利ちゃん、明日は何を着ていけば良い? 用意してくれる?」と前日に準備しておかないと安心しませんでした。私が沖縄へ行った時も、お土産の名産品より、時間を潰す為に入ったスーパーで買った洋服を喜んでいました。昭和3年生まれの母の青春は第二次世界大戦です。戦時中で贅沢は敵だという風潮の中、モンペしか履けません。高等女学校へ進学したものの、勉強もさせて貰えず軍需工場で学徒として働かされたそうです。私たちが想像する青春とは違いすぎます。だからかな? 母はとてもオシャレで、最期までファッションを楽しんでいました。
娘の私はというと、お仕事で色んな服を着ているせいか、そこまでの熱がありません。湘南に引っ越したばかりの頃、近所のおばあちゃんが母にこう言ったそうです。「そこの踏切にね、恵利ちゃんによく似た人がいたのよ、切りっぱなしの半ズボンのジーパンとTシャツだったから違うわよね〜」と。それ、間違いなく私です(苦笑)。おばあちゃんにとっては切りっぱなしのデニムは外で履いてはいけないものなのでしょうね。母も同世代なのに「ご近所の目があるからやめて」とは言わず、私がお願いすると切りっぱなしのデニムの裾をキレイにほぐしてくれました。
私も若い時は、あのブランドが着たい、あれもこれも欲しいとファッションを楽しんでました。今は洗濯方法と肌触り、着心地を何より優先! 歳を重ね肌が弱くなったのか、背中のタグの角がチクチク痛い、だから買って直ぐにタグを取ってしまう。タグを外すなら見栄でのブランドは意味なし。家で洗濯できるものを選ぶとブランドからますます遠ざかってますね。1990年代後半あたりからパンツもスカートもウエストのゴムが若い人たちにも受け入れられて近年は当たり前。心から楽だわ〜と喜んでいる私がいます。
そうそう、こんな事もありました。私が22歳の時「人生を変えたい」と母にピアスをしたいと相談したのです。わざわざ体に傷をつけるのはダメと10歳上の姉は言われたそうです。でも私の時は「お母さんも一緒に行って開ける」。え!? えっ!? えーっ!? ビックリ、想像もしない答え、そのとき母は62歳です。今更? でしょ。2人仲良く病院へ行き、無事にファーストピアスが輝きました。少し赤くなった耳たぶを触りながらランチをしていると、母は1人プリプリ怒ってました。理由を聞くと、私が開けたときには、先生は「開ける位置はどこにしますか? 2つ、3つと開ける予定があるなら……」と聞いてくださいましたが、母の時は何も聞かず、真ん中にパーンッと開けたそうです。そりゃ60歳過ぎの母がピアスを開けるだけでも珍しいのに、この先2つ、3つと開けるとは思わなかったのでしょう。そう思うのが当たり前というか普通ですよね。でもプリプリと怒り続ける母、乙女心というか何というか(笑)。
ヘアスタイルにも気を使い、私が若い頃にお世話になっていた美容師さんの元へ25年間(美容師の方が亡くなるまで!)通い続けていました。電車で1時間、バスで20分、オシャレな街、広尾まで2カ月に一度、80歳ごろまで。美容院へ行けない時は必ず帽子を被っての外出。凄いですよね。首のしわを隠すストールも必需品。1番のお気に入りは〈エトロ〉。私が海外旅行へ行けば、お土産は必ず〈エトロ〉のスカーフでした。好きな色はボルドーにラベンダー。メイクこそナチュラルでしたが他は完璧。人生の後半は青春を取り戻すかのように、オシャレを楽しんいでました。また機会があったらお話しさせていただきますが、最期に着る服(死装束)までちゃんと選んでいたんですよ。
デイサービスや施設でも、シニアがネイルやメイクをすると表情が明るくなって、イキイキとした表情になりますよね。歳を重ねると身だしなみは必須です。でももう一つ上のオシャレは心が潤うのでしょうね。私はオシャレというより、ハンドメイドで自分の快適を満足させています。皆さんもご自分なりのオシャレを楽しんでくださいね。
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