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〈新田恵利の看取りの話 Vol.4〉トホホな証明写真——世界一周の夢と「要介護」にならないための小さな努力

6年半にわたる実母の在宅介護と看取り、愛犬たちとの別れを経験してきたタレント・新田恵利さんの新連載。介護を「別れを受け入れる準備の時間」と捉える新田さんが、読者の人生に寄り添う看取りのエピソードを綴ります。今回は少し趣向を変えて、日常のドタバタ奮闘記をお届け。パスポートの再申請に向かった新田さんを待ち受けていた、厳しすぎる「証明写真」のダメ出しとは……? 苛立ちやトホホな思いを抱えつつも、大好きな旅を続けるため、そして「要介護」にならないために日々実践していることを語ってくれました。

文・クロワッサン編集部

結婚25年の時に作った夫婦お揃いのパスポートケース
結婚25年の時に作った夫婦お揃いのパスポートケース

先日、パスポートの再申請に行ったら、見事なまでにいくつものトラブルが……。ホント、トホホな1日でした。

旅行が大好きで、年に数回、海外、国内問わず出かけていました。コロナ禍の2年間の自粛を経て、その後はすっかりペースも落ちパスポートの出番も激減。そんな中、夏の旅行を予約する際にパスポートの期限切れが発覚! 再申請が急遽必要になりました。

近所にある証明写真機で顔写真を撮り、マイナンバーカードを持って市役所の窓口に行くと「あ、この写真はダメだと思います。後ろがグラデーションだから」。
……ん? なんで? だって証明写真の種類を選ぶ時、パスポート用を選んだのに? そう説明すると「じゃ一度、申請してみます? 判断するのは私たちじゃなく県ですから……」。「このまま申請してダメだった場合、申請のやり直しですよね。受け取りまで2週間と言われてるけど、それ以上の時間がかかりますよね?」と聞けば「そうなります」と即答。

じゃあ、撮り直すしかない。市役所の中にも証明写真機はあったけれど、私の格好に問題アリ。当日はDIYの予定だったから、スッピンに汚れても良いヨレヨレのTシャツ。この姿で10年のパスポート写真は撮れません。

「じゃ、出直します」と言ったのが金曜日。翌月曜日、買ったばかりのトップスを着て、ファンデーションだけ塗って市役所へ(2拠点生活を始めたばかりで、住民票がある家にはメイク道具も洋服も揃っていないのです)。今度は市役所にある機械で顔写真を撮影し、受付に提出すると「あ、前髪が目にかかってますね。コレじゃダメかも。それに顔が小さいわ」。え? え? え? そんな事、3日前の受付では言われてませんよ。第一、これより前髪が短いなら、オン・ザ眉毛! 高校受験用の証明写真で言われた以来だわ。

「え、じゃ前髪を切れという事ですか?」「いえいえ、しっかり分ければ大丈夫。それより顔が2ミリ小さいの」と定規を当てて私の顔の大きさを測っていた。顔は大きく出来ないわ!!と声を大にして言いたかったけれど「じゃ、どうすれば?」苛立ちを隠して聞くと「撮影後に大きさを調整出来たはずなんですけど……」。そんな機能には全く気がつかなかった。後ろの壁に背中をつけて下さい、3秒後に撮ります、みたいなアナウンスがあって、その通りに撮影したのに。そういえば昔の機械には顔の形が目の前のガラスに描いてあって、「この中に顔を入れて下さい」と言われた気がする。でも今回は枠もアナウンスもなかった。

納得がいかなくてイライラは怒りに変わってきた。「前髪を分けて、もっとカメラに近づいて写真を撮り直せば良いんですね」と、怒りを押し殺して聞いた。もちろん職員の方が悪い訳ではないと分かっているけど、最初にキチンと全てを、分かりやすく説明して欲しかった。「良ければ、写真館で撮った方が……。ちょっと高くなるけど。ちゃんと撮ってもらえるし」。既に2,200円をドブに捨ててるんです。今更、高いだ安いだ言いませんよ。って言うか、1番最初に提案して欲しかった!

すぐ近くにある写真館は地元に愛され続けた創業114年だか141年のレトロな建物。扉を押すと暑くて重たい空気がこもっていた。奥からご年配のご婦人が「証明写真ですか? ごめんなさい、30分で帰って来ますから」。どうやらカメラマンのご主人は出掛けているらしい。泣きたくなってきた。30分後、再び写真館に訪ねるとご年配のご主人がスタンバイ。昭和の男は奥様への口調も強く、決して気持ち良いものではなかった。さらにご自身で忘れっぽくなっている事を自覚しているのか、「付けた・付けた・付けた」「消した・消した・消した」と行動の全てをモゴモゴと3回ずつ繰り返す。最初は私に言っているのかと思うボリュームで。奥様が「ネックレス外してね、イヤリングもネックレスもダメなの。前髪も、もう少し分けましょうね」と年代物のブラシで直してくれた。数分後、証明写真は出来上がった。

「うん、よく撮れてる」とご主人は自画自賛。確かに証明写真としては完璧! キレイに撮れ過ぎて顔のシミそばかす、シワまでもがクッキリハッキリ。前回のパスポート写真は都内の写真館でデジタル撮影だったので、支障ない程度に整えていてくれたのでしょう。今回の写真とは、大きな差(泣)。あ、でも、もしかしたら10年前の私と今の私の差? 

残酷な証明写真を手に市役所の受付に戻ると「やっぱりよく撮れてますね」。その言葉にホッとしたのも束の間「髪の色はずっと同じ色ですよね」と念を押された。え? え? え? 髪の色? 10年後の髪の色? そんなもん分かるかい!? 今は白髪隠しでミルクティーにしてるけど、ブリーチは髪を痛めるからいつまで続けるかわからない。もっともっと白髪が増えたらグレイヘアにするわ! 髪の色までチェック入るの? 前髪だ、髪の色だと、まるでくだらない校則と同じじゃん。今は入国審査に瞳の虹彩や指紋の生体認証が殆どなのに、髪の色? 意味わかんない。17歳から10年毎にパスポートの申請をしてるけれど、こんなに厳しいのは初めて。犯罪が巧妙になってるからだろうけど、厳しさの方向性が微妙にズレてると感じたのは私だけかしら?

エジプトを訪れた時の1枚。後ろにピラミッドが
エジプトを訪れた時の1枚。後ろにピラミッドが
タスマニア島でワラビーと戯れる1枚
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フランス、モンサンミッシェルの前で
フランス、モンサンミッシェルの前で
インドのタージ・マハルで民族衣装に身を包んで
インドのタージ・マハルで民族衣装に身を包んで
エジプトを訪れた時の1枚。後ろにピラミッドが
タスマニア島でワラビーと戯れる1枚
フランス、モンサンミッシェルの前で
インドのタージ・マハルで民族衣装に身を包んで

私の夢は世界一周。これからも旅を楽しむためにも、要介護にならないためにも、足腰だけは丈夫じゃないと。足首クルクル、踵落とし、太腿伸ばし、信号待ちの横断歩道や部屋の中でも、気がついたらマメにしています。「継続は力なり」ですからね。

あ、最後にオマケ。出来上がったパスポートの顔写真はモノクロでした……。最後に「髪の色」を聞かれたのは何だったのか? さらに、7月からパスポートの申請料が7,000円も安くなったそうです。ホント、トホホ。

旅のお供のスーツケース。旅先でゲットしたステッカーはいい思い出。数えると合計8つのスーツケースを持っていることが判明!
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海外旅行に必ず持っていくという“いつもの”安心グッズ。左から、スリッパ、入浴剤、便座シート
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  • 新田恵利 さん (にった・えり)

    タレント

    母親の介護体験を元に、介護についての講演会を行う。2023年に淑徳大学総合福祉学部客員教授に就任。著書は『悔いなし介護』(主婦の友社)。

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