【俳優・吉岡里帆さんに聞いた】女性たちは生きるため、 正しさを超えて強くなる──映画『シャドウワーク』
撮影・シム・ギュテ スタイリング・岩田槙子 ヘア&メイク・信沢Hitoshi 文・兵藤育子
シャドウワークとは専業主婦のように無報酬ではあるものの、誰かを支えるために不可欠な労働のこと。暗闇で女性たちが何やら “労働”している、不穏なシーンから始まる本作。「女性だらけのカンパニーでこれほどスリリングな展開は珍しいので、まずはそこに魅力を感じました」
しかしながら吉岡里帆さんの役は、気楽に演じられるものではなく、準備も入念だったよう。日常的に夫から暴力を受けてきた紀子は、三浦海岸の外れにあるシェルターに身を寄せることに。〈おうち〉と呼ばれる一軒家では、DV被害を受けた女性たちが共同生活を送っていた。
「〈おうち〉メンバーの役者さんたちは温かくて、本当にホーム感がありました。しかも話し合いを大事にする方々だったので、自由に意見を言い合うことができました」
食事や掃除などすべてを交代で行う「持ち回り」というルールのなかで、紀子は穏やかな心を取り戻していくが違和感も覚えるように。そして〈おうち〉のもうひとつの役割を知った彼女に対し、家長の昭江(風吹ジュン)はどうしたいかを問う。
「役柄とリンクするのですが、風吹さんはどんと構えているところが素晴らしくて。私は性格上、迷ったときは誰かにお伺いを立てがちなのですが、『里帆ちゃんがそう思うのなら、それでいいのよ』と言ってくださったのが温かく、こういうふうに私も年齢を重ねたいと思いました」
一方、紀子を〈おうち〉へ導く看護師・路子を演じた美保純さんのことは、「本当にかわいらしい方!」と評して顔をほころばせる。
「紀子の荷物を持とうとして『やっぱ、いいや~』って感じでやめちゃったりなど、役としての心の動きが手に取るようにわかるんです。美保さんの軽やかな佇まいの魅力に、ハッとさせられました」
〈おうち〉の物語と同時に進んでいくのが、ある不自然な事件を巡る刑事・薫(奈緒)の捜査。彼女もまたエリートの夫から暴力を振るわれ、離婚を望んでいるのだが……。
「奈緒さんとのシーンは限られているのですが、並走しているのが魂レベルで感じられて、心強かったです。クランクアップのときに思わずハグしたら、久しぶりに泣いてしまって。スポ根漫画みたいですよね(笑)」
本作の展開も含め、いくつかの思考実験が出てきて、「正しさ」の価値基準が何度も揺さぶられるはず。
「どんなに虐げられて、極限まで追い込まれたとしても、そこから変わろうとする強さを演じたいと思いました。いびつな選択を経て、人として魅力的になっていく面白さを感じていただけたらうれしいです」
『シャドウワーク』
女性たちのシェルターで秘密裏に行われている出来事と、ある事件を追う刑事を巡るサバイブサスペンス。
原作:佐野広実
出演:吉岡里帆、奈緒、美保純、酒井若菜、ファーストサマーウイカ、佐月絵美、北村匠海、原嘉孝(timelesz)/風吹ジュン
9月25日(金)より東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
『クロワッサン』1173号より
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