『英国の怖い家』織守きょうや 文 山田佳世子 イラスト──イギリスの幽霊屋敷を楽しくツアーできる1冊
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
イギリスのさまざまな幽霊屋敷のエピソードを、イギリスに暮らした経験もあるミステリ作家の織守きょうやが丁寧に解説。山田佳世子の細やかなイラストでも楽しませてくれる。怖いというより、英国人のユーモアに心くすぐられる。
老舗百貨店の「フォートナム&メイソン」は、公式ホームページで店に現れる5人のゴーストを紹介しているという。デュークストリート側の入り口の階段を悲しげな表情で上り下りするグレイ・レディ、ワイン室でポルターガイスト現象を起こすガイウス・バックホルダーという元従業員。あるいは「サヴォイ・ホテル」では、ベルガールの少女の幽霊の噂のほか、奇妙な習慣がある。大富豪のディナーパーティが急な欠員で出席者が不吉な数字である13名になったところ、2週間後にその富豪が射殺されてしまう。その後、ホテルでは木彫りの猫を用意し、13名でパーティが行われる際はその猫を14番目の客として着席させているという。
他にもユニークなエピソードが多数。それにしても100年、200年はざらという、建物の寿命の長さに感嘆してしまう。歴史があるからこそ、ふくよかな物語が生まれるのだなと実感。
『クロワッサン』1170号より
広告