『雨が降ったら』寺地はるな 著──40代女性たちと地元の洋傘店
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
この連作短篇集の各章の主人公は、みな40代の女性だが、どんな生活を送っているかはそれぞれ。そんな彼女たちが、なんらかの形で町の「わかば洋傘店」と関わりを持つ。
子育てを終えた時期に夫から離婚を切り出されて別れ、一人暮らしをはじめた初佳は、ようやく得た自由な時間を満喫している。
心臓に持病のあった妹中心の家庭で育ち、妹が元気になった今も彼女を気にかけているみつほは、「しっかりしたお姉ちゃん」の役割から解放される場所がほしくて、自分で小さな家を購入する。
家族の世話とパートに追われる日々を送る苑美は、友人からフリマイベントを手伝ってほしいと頼まれ、久々に家族や家事とは関係のない行動をとる。
離婚して実家に戻り、母と暮らしていた美禰子は、母を亡くし、母娘の恒例行事だった島旅行に一人で出かける。
ちゃんと自分の人生を生きていても、雨の日は訪れる。心に雨が降る日に「わかば洋傘店」がどんなふうに関わるかは、各短篇工夫が凝らされている。主人公たちとは境遇が違っても、優しさあふれるこの一冊は、読み手にとっても心の傘となってくれる。
『クロワッサン』1170号より
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