「世間的に俳優は主役を務めてこそ一人前というけれど、その考えが僕にはなくて。最初に憧れたのはジャック・ニコルソン。助演男優賞が取れるような俳優に憧れました。『逃亡者』のトミー・リー・ジョーンズや『ブラック・レイン』の松田優作さん。子どもの頃もキカイダーよりハカイダー。いつも敵の役もかっこいいと思っていましたね。そういう意味では理想に近い形で仕事をこなしてこれました」
強面な役を多く演じている印象があるけれど本人は爽やかでフレンドリー。よく考えたらイケメン俳優ですよね?
「もう一回言ってもらってもいいですか? 大きな声で!」とお茶目に笑う。
何事も自分自身が楽しむことが大事と考えるポジティブな性格。そんな北村一輝さんを悩ませたのが4月上演のミュージカル『王様と私』の王様役のオファー。1956年の映画版ではユル・ブリンナーがアカデミー賞主演男優賞を受賞、2015年のミュージカル版では渡辺謙がトニー賞にノミネート。以降も国内外で高く評価された。
「やっぱり歌の実力がね。昔から歌を鍛錬されている方々が戦っている土俵で、自分がどこまでできるのかという不安もありましたし、お客様の前に出てお金をいただくのに勢いと興味だけで参加するのもどうなのだろうと」
ある言葉が出演の決め手となった。
「20代の頃、日舞やバレエ、声楽、アクションと習い事をやっていましたが、今回のプロデューサーさんが当時の声楽の仲間だったんですよ。僕の歌声を知る人に〝絶対できます〟と言われたのは大きかったです」