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【演目:道灌】初心を思い出す柳家一門の手ほどき噺 │ 柳家三三「きょうも落語日和」

イラストレーション・勝田 文

【演目】道灌

【演目:道灌】初心を思い出す柳家一門の手ほどき噺  │  柳家三三「きょうも落語日和」

あらすじ

横丁のご隠居を訪ねた八五郎、貼り交ぜ屏風の中の絵に目を留め「侍の横に、ライスカレーを盆に載せた女がひざまづいてるけど、何の絵です?」。
隠居があきれて、狩の途中で雨に遭った武将・太田道灌が、立ち寄った荒屋で少女に雨具を借りたいと頼むと、山吹の花をひと枝差し出された。〝七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき〞の歌になぞらえ「実の(蓑)ない=雨具がない」の意の断りだったという故事を教える。
感心した八五郎「傘を借りに来る友達にその歌を聞かせて断る」と張り切るが…。

唐突ですが、今年の三月で落語家になって丸三十年たちます。月並みな感想ですけど、あっという間ですね。

で、三十年前に初めて覚えた落語がこの『道灌』。われわれ柳家の一門は手ほどきとして大抵この噺を最初に教わります。
といっても私は師匠の故・柳家小三治からは一度も稽古をつけてもらったことがなく、『道灌』もアニ弟子が教えてくれました。
登場人物がご隠居、八五郎とその友達の三人だけで、同じタイプのネタでは『子ほめ』など、他に笑いどころの多い噺もあるので、前座修行が終わり二ツ目になるとこの噺を高座で演じる機会がほとんどなくなってしまう落語家も多いようです。 
けれども『道灌』でお客さまに喜んでいただけるようになったら、人情噺の大ネタで喝采をもらうのにも勝る落語日和だと、大事に手塩にかける噺家もまた少なからずいて、何だか嬉しい気持ちになります。

『クロワッサン』1089号より

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